その他


□直江♀
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◆スノドロ主IN直江(♀)
 ※現代→戦国♂→現代♀だ。




危ないと思うと自然と体が動いて、相手を氷の婆娑羅で仕留めた迄は多分良かった。
問題はその後で、三成殿の前に出て庇うようにして立った時に、僅かに遅れたせいで傷を作ったのだ。
相手も渾身の一撃といったところか、深く深く刺してくるし………俺の傷口は広がる一方だった。
それで、相手が倒れる際に刺さってた刀が抜けたせいで余計に血は溢れるわ風が通るせいで痛いわ……そのまま倒れたのだ。土の地面にドサッと。
起きあがるに起きあがれない状況で三成殿が泣きながら俺を呼んでいた。それだけは、覚えている。
でもどうしてかそれ以外はもう真っ黒に塗りつぶされて――多分、事切れたんだろう。




「……の、…」

三成殿が、小さく口を開くが聞きとれずに首を傾げる。
やっと止まった涙が再発しないか、少し不安だった。三成殿が泣いたら、私まで泣きそうになる。
でも多分まだ心ではきっと彼は泣いている。昔馴染みなんだから、それぐらいは分かる。

「………私の為に、死ぬな。私を、庇うな。……私、を置いていくんじゃない……」

すまない、すまない。私をどうか責めてくれ。
そう最後に何度も何度も付け加えるようにして呟いて、三成殿は今度こそはっきりと、私を見る。
自責の念にかられている姿はあの復讐にもえていた頃と同じに思う。
…そんな必要は無いのに、まだこの世でそうさせているのは少なくとも私である事は変わらないだろう。
三成殿は、謝りたかったのだろうか?
私―――否、俺に、自分を庇ったせいで死んでしまわせた事を。

『……馬鹿、だなぁ…』

真っ直ぐな三成殿は自分が悪いとこの400年近くずっと悩んでいたのか?こちらに生を受けてからも、悩み続けていたと言うのか?
……馬鹿をも通り越して、呆れてしまう。

『したかったから、した。それだけだ。責める必要などどこにもない』

おいていった事には悪いと思うが、あれは自分でも予想外の出来事だったのだから仕方が無い。
多量出血……まあ、傷があるだけで死に際はそこそこ綺麗だっただけいいんじゃないか?スプラッタは勘弁してほしい。
でも、あれからずっと1人悩んでいたのだろう《俺》の友人の為に、私は仕方ないから“直江兼続”でいてあげようと思う。
彼が望む自分自身ではないかもしれないけれど、それでもきっと喜んではくれると思うから。
先に説教かもしれないけど。吉継殿まで呼ばれたら正直長くなるから嫌だとは思うが。

『少なくとも私――いや、俺は、後悔もしていない。だから、三成殿が気に病む必要などないんだ』

今度こそ本当に瞳からぼろぼろと涙を流しだした子供のような三成殿に俺は一瞬焦る。
泣かせたのか…?とは思ったが取りあえず手持ちのハンカチでゴシゴシと顔を拭う。

『すまない、などいらないんだ。………ただいま、三成殿』

引き寄せられて悲鳴をあげるよりも先に顔を三成殿の薄い胸板に押し付けられる。
息が出来る程度なのは多分それなりの気遣いからだろう。
涙が肩や頭にあたって、冷たいがそこは黙っておく。前世含め、彼が泣くなんてとっても珍しい事なのだから。
顔は男のプライドというものが傷付くだろうから(気持ちは分かる)極力見ないようにしているが。


まあ、でも、多分。
鼻声で言われた「……遅いぞ、兼続」の言葉は幻聴ではないんだろう。
おかえり、では無いあんまりに三成殿らしい言葉。
それに私は思わずくすくすと控えめに笑った。




12.4.5
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