その他


□直江♀
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◆スノドロ主IN直江(♀)
 ※現代→戦国♂→現代♀の2度目だよ!



普通で普通の大学生を終えて(強制終了だったけど)戦国時代的なところに生まれ直して。
婆娑羅の世界と気付いてからもなんだかんだで謙信公のお傍で頑張って。
男だった事もふっ切って……西軍の皆と過ごし、そして?
………恐らく、死んだのであろう。俺を含め、三成殿ら西軍の将はみな。
生きていても屈辱なだけだと切腹という道を辿りそうでもあるのだから。自分は、確か刺された気がするが。


『………憂鬱』

白いカッターシャツを着る際に見える胸のすぐ下の痣。ボタンを閉めれば見える訳でもないが、これはきっと俺の死んだ証。
俺―――いや、今生では何故かまた女として生まれた私なのだからこの一人称では良く無いか?
まあ、それは一旦置いておくとして…此処は東軍が勝ち治めた先の国。安定した、平和となったなじみ深い世の中。
………に、良く似た世界である。


「おはようございます」

リボンタイをつけて、革素材の鞄を片手にして学校へと向かえば、校門の前で出あうお人。
和やかな変わらぬ笑みで私を迎える謙信公……いえ、こちらでは上杉謙信“先生”。
…お察しの通り、ここは私の知る現代では無く婆娑羅の世界であったのだ。
しかも名乗る事をする以前に、もともと《私》を知っていた謙信公は「おひさしぶりですね」と気付くし。
顔立ちは前々世を足して割ったような感じだからそこまであの時の顔をしてはいない…と思うのだが謙信公だから、と思えば不思議と納得できる。
ようは不思議毘沙門天パワーである。

「きょうはいつもよりはやいですね」
『日直なんですよ。面倒ですがサボる訳にもいきませんし』

口調ばっかりはちぐはぐだがまあ、多分大丈夫だと思っている。
………バラす、というのは正直嫌で仕方無いのだ。前世男現世女…どう、説明しろと?
絶対に面倒なやつもいるのだし。(誰とは言わないが恋とか冗談は頭だけにしろ)
まあ、嫌いでは無いのだが厄介と言えば厄介の奴のうちの1人とクラスが同じになってしまったのだが。
…恐らく記憶もあるのであろうし。徳川を殺そうと追いかけ回すのはもはや日常茶飯事の光景となっているのだから。

『………日直、“彼”なんですよね』
「それはたいへんですね。おそらくもうきょうしつについているでしょうが」
『何故、分かるのです?』
「……さきほどまんしんそういのたぬきをみかけましてね」
『…ああ、………』

狸、という例えだがさすがの私でも分かる。つまりはぼろぼろの徳川が居たのだからもう三成殿もいるであろうという事だ。
……好きか嫌いかで言えば友人としては好きだ。しかし、だからこそバレたら面倒でもある。
今の名は“直江兼続”では無いせいもあって今のところ分かってはいないと思うが…その名を色んなクラスで叫ぶようにして呼んでいたのをずっと無視していたから、こそ。
知った瞬間怒る→追いかけられる→捕まって尋問→何故女になどなったァァァア!
なんて、逆ギレされそうである。いや、別に好きでなった?戻った?訳では無いんだが。

何はともかく早く向かうしかないか、と軽く手を振って謙信公(先生、とはやはりどうも呼びにくい)と分かれてから教室へと小走りで向かう。
…スパッツ履いているとはいえさすがに全力疾走は躊躇われるのだ。下手したらめくれるっつーの。


『おは、………あー…』

見えて来た1年生の自分のクラスの扉をガラッと音を立てて挨拶をしながら入ってきて思わず途中で微妙な声に変わる。
既に確かに三成殿こと“石田三成”は居た。居たのだが、机に突っ伏して寝ている。
爆睡しているのか起きる気配も無い。起こすのも可哀想なぐらいに安らかに眠っている。
……こちらの三成殿はきちんと睡眠をとるようで、少し安心したのは私だけではないと思う。

『黒板、日誌、花瓶の水の入れ替え……ってところかな』

自分のやるべき事をとりあえずあげて、自身の席に鞄を置いてから黒板に手をつける。綺麗に綺麗に何度も黒板消しで消して、今日の日付を端に書き込めば完了。
花瓶の水の入れ替えも、教室前の水道でぱぱっと終わらせる。綺麗な花だったが大分枯れてきている。

問題は日誌。これが結構面倒で今日の予定を書き込む必要があるのだ。ちなみに帰りにまた書く必要がある。
思いつく限りをうめて、今日も1日頑張ろうとコメント欄にかいてから三成殿にも書いて貰わねばいけないからと机に置こうと立ち上がる。
おいて、あとは読書でもして時間を潰していればいいと思っていた自分は、次の瞬間これでもかという程に肩をはねさせる。


「……………、」


薄緑がかったその目を、三成殿が私に向けていた。
遠く遠くあの頃でもこの景色の中に映し出しているのか三成殿は動かないが、ただ私に向ける視線は暖かい。
口が、“ な お え ” と動いたのを私は見逃さない。
縋る様なその表情が何かにダブって見えた。
どこかで見た、いつもは無表情に近い三成殿の悲しそうな顔。それは、どこで?


――――俺が死する、その間際で、だ。




12.4.2
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