短編-よみきり

□月明かりの夜
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ルームサービスで夕食を終え、シャワーも浴び、今はもう寝るだけ。
窓から入る月明かりが、暗い部屋をやさしく照らす。
エドワードの前に立つアルフォンスはまだ細く、強く抱きしめたら、そのまま壊れてしまうのではないかと思わせる。

「・・・ダメだアル。このベッドは2人で寝るにはせまいだろ?」

エドワードはそう言って、足をふらつかせているアルフォンスを横からやさしく抱きかかえるようにして支えた。
鎧の頃には感じられなかった弟の体温を感じて、少しだけ体が熱くなる。
アルフォンスは自分の両足で必死に支えていた体重をすべて兄に預け、完全に抱きかかえられる状態になる。

「今みたいに、ぴったりくっついて寝れば大丈夫だよ兄さん。」

シングルサイズのベッドは狭いが、確かにアルフォンスの言うようにすれば2人で寝られないこともない。
だが、

「・・・大丈夫なわけないだろ」

そんな状態で、オレの理性がもつわけない。
体力が完全ではないアルフォンスに無理はさせられない。
それに、たとえ理性を保てたとしてもエドワードは寝相が悪い。
アルフォンスに怪我をさせてしまうかもしれない。
大事な弟だからこそ、一緒に寝る状況は回避しなければ。

「どうして?」

純粋な目で見上げるアルフォンスの視線が痛い。

「オレが寝相悪いの知ってるだろ?アルが怪我でもしたら大変だ。」
「大丈夫だよ。兄さんにけられたくらいじゃ怪我なんてしないよ。」

アルフォンスはそう言うが、その体つきは明らかに頼りない。
細い腕は、強く掴めば折れてしまいそうだ。
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