心と秋の空

□15.充:護
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白さんが、先輩が懸念していた俺達『キセキの世代』の行く末は、恐らく予想していた通りだったんだろうな。
 




それでも、俺は今、バスケを続けている。

この海常高校で、頼りになる先輩達と一緒に。

他校にライバルもできて、IHでは青峰っち達に勝てなかったけど、冬はリベンジしてやる。

もちろん、黒子っち達とも。
 




まだ、秋野先輩には再会していないけれど、まだ先輩のことを諦めたわけではない。

むしろ、会えなかった分、その想いはより強くなっている。


すげぇ、会いたい。


銀っちとは再会できて、俺の勘違いを謝った。

先輩の居場所は聞かなかった。

俺が自分で探して会う予定だから。

そして、その時に、再び告げる。

俺の想いを。



「森山先輩!!女バスにナンパしてないで、練習戻ってくださいよ。俺が笠松先輩にしばかれるんスけど」
 

合宿中であっても、森山先輩は相も変わらず森山先輩だった。

誠凛や桐皇などとも偶然に重なった夏合宿だってのに…。
 
女バスの人たちも笑ってないで、さっさと森山先輩をふってくれればいいのに。

てか、俺の話全然聞いてねぇ!


「ちょっと、森山せんぱ…、……!!?」
 

俺の視界の端に映ったのは本来、この場所にはいない存在。

森山先輩や、他の先輩、さらには女バスメンバーでさえも目を見開いている。


「え…」

「よぉ、久しぶり」
 

白さん…?

なんで、ここに。


「あー!!!!!!!!!『新星の三皇』、『流星』の、銀双葉さん!!?」

「へ?」

「おー、よく知ってんな。ナンパに精出してるくせに」

「いや、これは……」

「ま、いいんじゃね?性犯罪で通報されねぇなら」

「せ、…犯罪!?」

「ちょっと、白さん。『新星の三皇』とか、『流星』とか、どういうことっスか?」
 

聞いたことがあるような気がするけど、思い出せない。

てか、いつ聞いた?


先輩達のその、

え、マジで知らねぇの!?、

的な目が痛い。


「お前、知らないのか!!?数年前の天才バスケ選手だぞ!!し・か・も、お前とポジション被ってんのに!!」

「…うそぉぉぉお!!?」
 

掴まれた俺の襟首。

その手を視線で辿れば、恐ろしいほどにっこりとした白さん。


「俺がバスケしてたら何か、問題あんの?」

「ぜんっぜんありません!!すみませんでした」
 

腰を直角に曲げて謝る俺に、笠松先輩がぽんっと、俺の肩を叩く。

いつもしばいてくる先輩に哀れみの眼差し向けられるなんて…、すっげぇ複雑。


「はじめまして、銀双葉さん。今日はどうされたんですか?」

「んー、後輩の見学なんだけど、秀徳ってどこ?」

「あぁ、秀徳さんなら、この上の体育館で誠凛と練習試合してる筈ですけど」

「お、サンキュー。さっすが、主将だな。笠松君。どっかの駄犬とは大違いだ」
 

駄犬って、俺っスか。

これ見よがしに俺の方見てくる。

笠松先輩は今までにないほど、すっげぇ嬉しそうな顔してるし。


「え、俺の名前…」

「今でも高校バスケは観てっから。お気に入りの学校とかはきちんとスカウティングしてるぜ」

「海常もお気に入りなんですか?」

「もちろん。お前達の先輩にすっげぇ、からかい甲斐のあるPGがいてさー。マジで楽しかった。連続で抜いたときの、あの苛ついた顔とか傑作だった」
 

さすがに、この人のこの発言に、体育館中が沈黙した。

選手としてだけでなく、俳優やモデルとしても有名なこの人を皆注目していたから、それも仕方ないけど。

マジで、白さん楽しそうな顔してる。

そうか、バスケしてたのか…。


「白さん!1on1してくださいっス!!」

「え?わんわんお?」

「1on1っス!!」

「あぁ、散歩してほしいのな。リード持ってくっから、待ってろ」

「ちげぇぇぇよ!!どんだけ、俺犬扱い!!?」

「え、お前犬だろ。世にも珍しい、末期色で、二足歩行の」

「末期色!!?」

「末期だろ。そんだけ黄色いなら」

「これ、地毛っスよぉぉ!!」

「お前、うるせーな」

「誰のせいだよ!!」

「黄瀬涼太にきまってんだろ」
 

…何だろう、この疲労感。

バスケよりも疲れる。


「…はぁ。レクチャーぐらいはしてやるけど、3on3な。誠凛女子も混ざって、てきとーにチーム組め。で、いいっスよね。デ豚…、じゃなくて、ゲンゴロウ監督?」
 

今、完全にデブ+ブタって言った。

てか、ゲンゴロウ?
 

やべー、うちの監督の青筋、今までにないほどたってる。


「………よろしく頼むよ」
 

表情筋を引きつらせながら、監督は白さんに握手を求めたけど、スルーされた。

…どんな確執があんだよ、この二人。
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