心と秋の空
□12.従:仁
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私たちが中学校最高学年に、一軍ルーキー達が二年生になって一ヶ月。
レイとの出会いからいろいろあった。
その中でも私にとって大きかったのは二つの変化。
三軍だった小柄な少年の異例の一軍昇格。
レイの正式な一軍マネージャーとしての入部。
一軍マネージャーをしている私にとってはこの二つが大きな変化。
他にあるといえば、レイの入部によって以前よりも灰崎君が部活に来るようになったことと青峰君の才能が開花してきているということ。
他の皆もすごく上手くなってきていて、頑張っていて、マネージャーとしてはやりがいがある。
ただ一つ懸念があるとすれば、その才能の開花による心身への影響ぐらいで。
でも、まぁそれは監督やレイ、修君がいるから大丈夫だと思う。
「秋野先輩」
後ろからかけられた声。
それはここ数ヶ月で聞きなれた後輩の声。
そして、ここ数ヶ月で感じなれた後輩の視線。
「ん?どうしたの黒子君?」
振り返れば、戸惑ったような、揺れる水色の瞳。
中学生らしく幼さの残る面差しが特徴的な噂の三軍からの異例一軍昇格を果たした黒子君がいた。
視線に敏い私は、影の薄い黒子君にとってかなり新鮮らしく、未だに慣れてもらえない。
一般的に、黒子君が後ろから声をかけたら驚かれるのだそうだ。
だけど、私は声をかけられる以前から、黒子君から向けられる私の様子を伺うような視線を感じていたから、特に驚く必要もないわけで。
「……え、あ、あの、主将が呼んでました」
「そっか。ありがとう」
苦笑交じりにお礼を言い、帝光男子バスケットボール部の主将がいるであろう部室へと向かう。
背中には昇格当初よりは薄れた、黒子君からの戸惑いと、最近感じ始めた安堵の視線を受けながら。