心と秋の空

□2.荷
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朝練も無事に終わり、私は虹村君と別れて、自分のクラスへと向かった。

あー、一時間目は国語かー。

あのじーさんの授業、クソ眠いんだよねー。


「おっはよー」
 

いつものメンバーに声をかけた。

だけど、いつもは返ってくる声はなくて。
 


あれ?

あんま、声出てなかった?

朝はあんま声出ないけど、朝練後は声出てるはずなんだけど。

主に、虹村主将のせいで。



「おはよー!」
 

今度は大きめの声でいったつもり。

そのせいか、クラスからの注目を浴びることになった。

私は比較的クラスにも馴染めている部類だった筈。

派手でも、地味でもない一般的な緩くて、ギャグ要員だと。
 
だけど、クラスの空気は酷く冷めていた。

私を見る目は冷めていた。

なんで?

何かした?


「おーい。秋野!さっさと席つけよー」
 

担任がやってきて、いつもの騒がしいクラスが戻ってきた。

だけど、それはいつも通りじゃない。

私だけが、取り残されていた。



 訳わかんないよ。





 

















それから、その一日は最悪だった。


クラスメイトからだけじゃなく、廊下に出れば他のクラスの人からも白い目で見られる。

ひそひそと何か言われている。
 

その真相を知ることとなったのは部活での後輩の桃井ちゃんからの情報だった。


一部の一軍部員からもひそひそと囁かれている中、彼女はこっそり教えてくれた。
 


私が年下モデルのキセリョウタと付き合っているということ。

しかも、私が半ば強引に付き合うように仕向けて、そのモデルのキセリョウタが困っているということ。
 


モデル?

黄瀬涼太?

誰それ。



「やっぱり、付き合ってませんよね」

「うん。私、モデルとか、年下とかそういうのは無理。やっぱ、理想は20以上年上の落ち着きのある大人だから」

「え、20ですか……。でも、そういう噂が学校全体に回っているので、気をつけてください。もし、何かあれば私に相談してください!!絶対に一人で溜め込んじゃダメですよ!!!」
 


うわー。

いい後輩に恵まれてるわー。
 

桃井ちゃんも苦労したもんね。

青峰君との仲の良さとか、一年生にして一軍マネジで妬まれとかしたけど…、彼女はずっと一人で耐えていた。

幼馴染の青峰君には迷惑だからと、助けを求めずに。

だから、私は必要最低限のことしかしなかった。

なんだけど…、とても懐かれちゃいました。

こんな巨乳美少女に。
 

分析力、情報収集力は彼女が圧倒的に上だ。

あまりに突飛すぎて、嫉妬なんて湧かなくて、尊敬することしかできなかった。

でも、私の方が部活のマネージャーとして経験豊富。

といっても、一年しか変わらないけど。

まぁ、その分、人数の多い部員の体調管理とかフィジカルサポートは私の方が上。

あと、料理ぐらいかな。
 

一軍のマネジは私と桃井ちゃんだけ。

だから、二人で助け合いながら、仕事を分担してる。

もちろん、ドリンクは私が担当だけどね。


「ありがとう。桃井ちゃん」

「なーに、後輩にセクハラしてんだよ」
 

嬉しさのあまり、桃井ちゃんの頭を撫でていると、虹村君に頭をはたかれた。


「いったーい」

「嘘つけ。全然痛がってねぇくせに」

「ブロークンハートなんですー。主将がツンデレなせいで」

「だーれーがー、ツンデレだ!!」
 

あと、幼馴染にも恵まれている。

素直じゃないけど、心配してくれているのがその瞳でわかる。

すぐ顔に出るもんね。

直情的な主将様。

だけど、大丈夫だよ。

私、知り合いにモデルなんていないから。

 











誰でも人は『荷』を背負っている。

それはいらないものもあって、重過ぎるものかもしれない。

だけど、そこにはちゃんと大切なものもあって、重いと感じる分、その大切なものの重みを実感すると、頑張れる気になれる。
 

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