キセキの始まり

□5Q
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上履きを脱いで、助走をつけて、ジャンプ。

空中で逆立ち状態になって、火神の背中に勢いよく手をつく。

そこからバク宙二回転して、行儀は悪いけど売店のおばさんの目の前、レジ台の上に着地。
 

すごい騒がしかった売店付近がシィィィンって静まり返った。

え、僕やっちゃった系?



「「「すげぇぇぇぇぇえ!?」」」
 


あら?

大歓声?

拍手まで沸き起こっちゃったよ。
 
一応、唖然としているおばさんにも笑いかけて、幻のパンを無事買うことができた。

戻るときは、皆道を開けてくれて、すごいすごいって誉めてくれた。


「買えましたー!」
 

じゃーんって、効果音がつく感じで一年バスケ部の前でパンをかかげると、男子はアホ面だった。

あ、黒子どこ?


「さすが、黒子だな」
 

黒子のヤロー!!

レイさんに頭撫でてもらってるし!

てか、何でパン持ってんの!?


「あの・・・、僕も買えました・・・・・・」

「なっ・・・オマ・・・。どうやって!?」

「人ごみに流されてたら、先頭に出ちゃったんで、パンとって、お金おいてきました」
 

・・・そんなんアリ!?


「?どうしたんですか?」

「いや・・・。なんでもねーよ」

「さすが幻の6人目はちげーな・・・」
 

いつの間にか黒子も買っちゃってるとか、マジショック。

しかも、レイさんに誉められるとか・・・。

マジへこむわー。


「常磐もよくやったな」

「え・・・」
 

レイさんの手が僕の頭の上に・・・。

レイさんが、レイさんが・・・僕を誉めてくれた!!


「まぁ、二人ともよくやったと言いたいところだが・・・。先輩の言葉を覚えてないな」
 

呆れたようなレイさんの表情。

え?幻のパンのおつかいじゃなかったけ?


「昼の買出し、もだ。・・・俺が買ってくるから、そこにいろ」
 

え?

銀さんにそんなことさせられない!

危ないから、戻って・・・!


「すまない。普通のパンを買いたいんだが・・・、のいてもらえないか?」
 

相撲部であろう男子生徒の肩に手を置いた、レイさん。

その男子生徒は何だよ的な目で振り返ったけど、一瞬固まってから道を譲った。

その後、僕らは驚くことしかできなかった。銀さんは一言も話さない。

なのに、さっきの男子生徒がのいてから、連鎖的に道は開けていった。

再び静まり返った売店前。

銀さんはできた道を悠々と進み、幻パンじゃなくて、メジャーなパンばかりを選んでいく。

両手いっぱいにそれらを抱えたレイさんは来たときと同じように悠然と戻ってきた。
 
未だ道ができたまま、購買前の学生達はざわめき始めた。



男装モデルのエル。



レイさんは基本、お弁当派だから、彼女が購買に来たのは初めてだと思う。

そんな有名人が購買に来たって言ってもここまで彼女の思い通りになるの?

でも・・・、すげぇぇぇ!さすがレイさん!!


「戻るぞ」
 

やっぱり、レイさんは僕の憧れだ!!
 

その後、先輩達とおしゃべりしながら、お昼を食べた。

あの幻のパンは美味しかったけど、レイさんは微妙の一言。

まぁ、何か足りないとは思ったけど・・・。

さすが、レイさん。舌も肥えてる!
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