The cruel game of heart
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深くは聞かれなかった。
だけど、不愉快そうに吊りあげられた柳眉を見て、彼女を退屈させないための道具として生かされているのだと知る。
好きで“異物”になったわけじゃぁないが、自分で選んだ道だった。
いまさら、文句を言おうが無駄なこと。
この胸にナイフを突き立てど、心臓はその拍動を止めることを知らないのだから。
【“異物”はその役目から逃げることは許されない。】
つまり、この心臓は枷なのだ。
あの日、動くことを諦めた本当の、私の心臓と引き換えとなった錠。
鍵など存在しない。
鉛玉でも、
鋭い刃でも、
灼熱の炎でも、
全てを灰に帰す雷でも、
氷点下の風雨でも、
生物を侵食する細菌でも、
人工的に作られた毒薬でも、
自然の摂理である重力も、
刻一刻と無情に流れる時間でも、
“異物”の枷を開く鍵とはなりえないのだ。
例え、人外の刃でも、“異物”を殺すことはできない。
これはルール。
誰にも歪められない。
“異物”自身にも歪められない。
“異物”を愛した者でも歪められない。
“異物”が愛した者でも歪められない。
“異物”を嫌う者でも歪められない。
“異物”が嫌う者でも歪められない。
“異物”を知らぬものでも歪められない。
“異物”が知らぬものでも歪められない。
それがルール。
森羅万象全ての理と同様の、絶対的なルール。
「…………ふふっ」
――君は俺のこと好きじゃないんだろ?でも、俺は君が好きだぜ!
頬を濡らしながら笑うキラが思い出していたのは、
気まぐれなはずなのに一途に愛を囁いてくれる役持ちではなく、
真っ直ぐで純粋で捻くれていた過去の遺物であった。