The cruel game of heart

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お茶会がお開きとなり、アリスは仕事へ、私はお姫さんに連れられて彼女の自室へと向かった。

そこで行われるのは、恐らく、尋問。

異物である私への。
 


青かった空がこの城の主の纏うドレスと同じ色に染まった。

それを嬉しそうに見つめるのは古びた記憶の中に残るものに似ている。


「キラ……、お主の目的を言え。なぜ、この世界に来たのじゃ?」
 

直球の言葉。

その方が答えやすい。

楽しそうに唇を歪めるビバルディに私は瞑目する。



脳裏に浮かぶのは、目の前より少し若い“ビバルディ”という名の女王様。



夕方が好きで、紅茶が好きで、斬首刑が好きで。

……それで、私が作ったお菓子を美味しそうに食べてくれていた。

女三人でのお茶会、ファッションショー、お昼寝。

楽しくて、幸せで、大切な時間。



そこに、“ビバルディ”はいた。
 


眼を開けば、そこにいるのは、“この国のビバルディ”。

私の知る“ビバルディ”ではない。



それでも、誓った。

約束した。


……誰、と?


誰に、決意表明した?

霞みがかる記憶。



蘇る、“ビバルディ”の無邪気な微笑み。

私の本当の名を、知る唯一の存在。



だから、答える。

目の前にいるのは、彼女でなくとも。

不鮮明な時間の中で、確かに形をもつ“誓約”を、紡ごう。


「……君に会いに、君を護るために、この世界に戻ってきたんだ」
 

見開かれるビバルディの瞳。
 

気持ち悪いと罵られるか。

それとも、受け入れてくれるか。

はたまた、それら以外か。
 

なんと言われようと、変わることはない。

誓いも、私自身の意志も。


「別の時間軸のわらわか……」

「うん。その国の“ビバルディ”とは親しかった」

「親しかったということは、死んだか」

「ご名答!だから、今度は、次こそは“ビバルディ”を護る」

「違うわらわであってもか」





「それは重々承知だ。


姿かたちが、

声が、

性状が、

どれほどまでに似ていようと、過ごしてきた時間は違うんだ。


だからこそ、あなたと過ごしている今も、彼女を思い出させると同時に、違うことをありありと突きつけられる。


……私は彼女を忘れるつもりは毛頭もない。


だけど、彼女が生きた証として、彼女とすごした時間があったと証明するために、例え別人であろうと、お姫さんを護りたいんだ」





「愚かな異物じゃな」

「知っているさ。とうの昔から、“異物”となったあの日から」
 




変わらない。

変わることはない。

変わることは許されない。



なぜなら、あの時間は、何物にも代えがたいものなのだから。



全てを失ってもいい。

いや、違う。彼らとともに消え去りたかったんだ。

それが自己満足以外の何ものであろうと。
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