The cruel game of heart
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「…………じゃぁ、キラが好きなやつって誰だよ。時計屋さん?アリス?」
そうだ。俺がキラへの想いを自覚して、ヤキモチ妬いて、八つ当たりして、告白してからだ。
伝えてスッキリすることはなく、時計じかけの胸の中は、伝える前以上に苦しい。
キラと同じ空間を共有しても、苦しいだけ。
だから、キラの好きなやつを……。
「あのなぁ、ボリス。お前はあいつの好きなやつ知ってどうすんだよ」
「それは……」
わかってる。
分かって、見つけて、その後に、そいつを殺しても、キラは俺のものにはならない。
俺をキラのものにはしてくれない。
どう足掻いても、キラの特別にはなれない。
俺達を、キラを縛る“ルール”のせいで。
結局、俺の鬱憤を晴らすことにしかならないんだ。
「というか、多分、いねぇだろ。キラの特別は、もう実在しねぇんじゃねぇのか」
あぁ……。
なら、ハナっから負けてる。
俺のこのわだかまりは、この先ずっと……。
「……キラが探してる、時計の」
それしかない。
キラに想われていたのに、死ぬとか、どんな馬鹿だよ。
俺だったら、絶対に、どんな手段を使ってても生き抜いて、特別であろうとしたのに……。
「あぁ。リスク犯してまで探すほどのやつだ。よっぽど大切なやつ“だった”んだろうよ。今も、引きずるほどにな。それが友情か愛情かはわかんねぇけどな」
「会ったこともないくせに、先に死なれてるとか、……全然勝ち目ないじゃん」
なぁ、おっさん。
わかりきったことをなんで、言うんだよ。
どうやったって、キラは……。
諦められるもんなら、とっくに諦めてる。
そうできないからこそ、俺は、今も、苦しんでる。
「そりゃぁ、そうだろ。死んだやつには敵わねぇって言うだろ。……過去は消せねぇが、過去の産物が未来をどうこうできるわけもねぇ。今、キラといるのは、俺たちだ」
………………。
「…………なぁ、おっさん」
「なんだ?」
「すげー、おっさん臭ぇな」
「なんだと!人がせっかく……」
俺の一言に青筋を浮かべるおっさん。
あぁ、そのほうが、あんた“らしい”や。
そうだ、俺たちは、俺は…………。
「でも、サンキュ。……俺“らしく”なかった」
「…………あぁ」
「ちょっと行ってくる」
少しだけ、胸のつかえが取れた気がした。
おっさんのおかげだと信じたくはないけれど、まぁ、それが事実なんだろう。
絶対に、認めなくないけど。
視線を向ければ、キラはまだ女王様とソファで談笑中だった。
そこで割って入ったら、嫌がられるだろうな。
だけど、女王様に首をはねられることはないと思う。
俺は猫で、領土争いに興味はないから。
多分、大丈夫だろう。
バン――――ッ!