The cruel game of heart

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なんで、そんな風に笑ってられるんだよ。

キラは女王様が好きなのかよ……。

なんで、あんたの隣に俺はいられないんだよ。“

特別”はつくれないって言ったくせに。

なんで、どうして…………。


「随分、荒れてんな。ボリス」

「……おっさん」
 

その言葉にテーブルを見遣れば、数えるのが億劫になりそうな数のグラス。

これ、俺一人で飲んだのか……?

舞踏会が始まって、そんなに時間が経ってないはずなのに。


「キラを誘えばいいじゃねぇか」
 

そのたった一言が実行できれば、苦労はしない。

けど、その結果は目に見えている。



結局は、無意味な行為だ。



「誘って、キラがのってくれると思ってんの?それに、今、女王様と一緒じゃん」
 

八つ当たりだ。

自覚はある。

だけど、かまってなんかられない。

グラスを呷れば、冷たい液体が火照る喉を通っていく。

あ、やばい。

ハイペースで飲んできたせいか、ちょっとクラクラする。


「……妬いてんのか」

「悪い?…………あんなに楽しそうじゃん。キラ」

「……だな」
 

なら、聞いてくるなよ。

気分が悪くなってきた。

客室を借りようかな。

これ以上、ここで苦しい想いをするのは嫌だ。


「ほっといてよ。俺のことは」

「でも、キラのやつはハートの女王を“異性”として見ているっていうよりは、“同性に対する友愛”みてぇに俺は視えるけどな」

「へ…………?」
 

思わず、おっさんの顔を凝視した。


「俺は“男女の友情”ってのもアリだと思うが、“同性の友情”の方が深い気がすんだよ。同性にしかわかんねぇ、伝えられねぇ悩み事もあるだろうしな」
 

何言ってんだよ、この人……。

自分が言ってることの意味がわかってんの?


「いや、ちょっと待てよ、おっさん。キラは“男”だろ……」
 

そう。

確かに、キラは俺と同じで男だ。

ルールだけじゃなく、そのこともあって、キラは俺を視てくれないと思ってる。

俺だって、まさか男を好きになるとは思わなかったから、性という問題で悩んだこともあった。

それでも、俺は“キラ”が好きなんだ。


「比喩だ、比喩。異性間の色事関係に、あの二人が視えるってんなら、医者に行ったほうがいいぜ。それか、それだけお前がキラってやつを知らねぇってだけのことか」
 

最後の一言に、思わずムッとしてしまう。

少なくとも、おっさんと同じくらいはキラのことを知っているつもりだ。



好きだから、視ていた。



だけど、おっさん以上とは言えないのは、上司と部下としての関係は俺たちとの間になかったから。

それを埋めるように、キラに対して接してきた。

スプレーかけられそうになりながらも、去勢されそうになりながらも……。



もう、そんなやり取りは随分してないけど。いつからだっけ。



どのくらい、俺はキラとそんな関係じゃいられなくなったんだっけ。
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