The cruel game of heart

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「そんなのいやだ」
 

金色の瞳が光った。

否。


雫が木漏れ日を受けたために、煌めいて見えただけ。

鮮やかな蛍光色に近いピンクの耳の先は下を向き、同色の尾も地面についたままぴくりともしない。

頭部は俯いたまま。

しかし、決して華奢ではないその身体は酷くか弱く見えた。




それでも、この両の腕がその体躯を包み込むことはない。



この手が鮮やかなピンクの頭を撫でることはない。



この口が慰めの言葉を紡ぐことはない。





なぜなら、“ルール”だから。

俺が、私が、※※だから。
 









そこで、俺の思考は潰え、気づいたら白い天井が見えた。

消毒液の香りが鼻をつく。

視覚と嗅覚から、ここが遊園地の救護室だと脳が判断する。

被せられたシーツは白く、コートは近くの椅子にかけてあった。

首に触れれば、布の感触。失血からか倦怠感が身体を襲う。

起き上がることはせず、再び目を閉じる。

夢に身を投じることもできず、俺はベッドの上で身体を休めることに努めた。

すぐに、この気だるさもひくから。


「………………」
 

聴覚は何も捉えることなく、近くに人がいないことを示した。

静かな、白い空間。



嫌な“時間”を思い出すな。

ここは……。
 


あの後、オーナーか従業員が発見して、救護されたというところか。

なら、チェシャ猫はどうなった。

自責の念にでも苛まれているのだろうか。

 









自嘲的な笑みを浮かべたキラは目を閉じた。

そのまま、再び、死んだように眠る。

そして、数時間帯後に現れ、首に巻かれた包帯を変えようとした医師が目にしたのは、傷一つない綺麗な白い肌だった。

医師の目に触れることがなかった、キラの胸部には青い薔薇の模様が浮き出て、ゴーランドを呼びに帰った頃には消えていた。
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