The cruel game of heart

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「…………三月兎か」

「……時計屋」
 

茶色の紙袋を抱えた、長髪の青年が眉を顰めながら、橙色の髪から覗く空へと伸びる長い耳が特徴的な青年を見た。


「お前ら、先にブラッドのとこに行っとけ。終わったって」

「わかりました〜」
 

顔がおぼろげな使用人達に上司への報告を任せると、兎耳の青年は銃口を向ける。


仇敵に。

敵意のこもった眼光を。
 

それを受けて、長髪の青年が銃を抜きかけて、やめた。


「……!?」
 

路地裏から飛び出てきたのは目元を仮面で覆った者だった。

振りかざされた剣の切っ先を間一髪で避けた兎耳の青年の紫水晶の瞳は何事もなかったように目的地へ向かう長髪の青年を映した。


「てめぇ、逃げんのかよ!!」
 

数弾発砲するも、その銃弾の行き先を鋼の刃が無理やり変えてしまう。

間髪いれずに薙ぐ剣を避ける兎耳の青年は仮面の男に対し、鉛弾を放つも、刃面で防がれ、男の肉を穿つことはできない。
 

仮面の男は長髪の青年がこの場から離れ、見えなくなってしまったのを見届けると、剣を鞘に収め、現れたときと同様に路地裏へ姿を隠した。


「ちくしょー!」
 

苛立ちを隠せない様子の兎耳の青年は、上司が待っているであろう広場へと向かった。
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