The cruel game of heart
□10
2ページ/17ページ
キラは遊園地へ、アイリは帽子屋屋敷へ滞在することになり、数十時間帯くらいが過ぎた。
いなくなっていたペーターは城に戻ってくるなり、相変わらず電波な様子。
アイリを連れてきたのは案の定この電波馬鹿で、アイリと仲良くするよう頼まれた。
彼女を連れてきたのはアイリ自身が望んだことらしく、私にはそれが理解できなかったが、遊園地での楽しそうな様子を見て考えるのをやめた。
いや、むしろ、この電波をよく信じられたわよねぇ。
あと、キラについても聞いてみた。
ついさっきまでアイリについて嬉々と語っていたのに、突然押し黙って、二度と近づかないでくださいと苛立ちを隠さない、ううん、隠せない様子で懇願された。
どうやらキラはペーターに拉致られた訳ではなかったみたいで…。
それはそれでいいのだが、キラの名前が出るだけで妙にピリピリした雰囲気になるのはいただけなかった。
比較的キラは常識人で、この国の人と比べれば紳士的な一面もある。
中性的な顔立ちも力も無駄に整った顔をもつ役持ちに劣らない。
背丈もペーターと同じくらいだが、この馬鹿よりも細身のわりに力は男性のもの。
常に笑っている印象はエースに通じるものもあるが、あの迷子騎士に比べてまだ話は通じるし、紳士的な行動からも好感が持てる。
性格はなかなか掴めなくて、エリオットとキラのあの一件以来地雷がどれなのかわからないのかが懸案事項だ。
ゴーランドはいたくキラを気に入って、ビバルディも例外ではないらしい。
だけど、帽子屋の人達とはそりが合わないみたいで、ディーとダムにいたってはキラの名前を出すだけでびくつく始末。
面白くなってここ最近からかっていることが多い。
今までのあの子達の所業に比べたら、かわいいものだと思うから罪悪感はない。
にしても、アイリはエリオットに妹のように可愛がられ、ブラッドにも気に入られ、ディーとダムともまぁ仲良くしてもらっているようで安心した。
少し気にかかることがあるとすれば、アイリとキラの関係性。
キラはゲームの円滑な完遂を重んじ、元の世界に帰ることを望んでいる。
それに対し、アイリはキラにこの世界に残ってほしいようで、二人の間の意見が衝突している。
そのせいとブラッドが裏で手を引いているのか分からないけれど、アイリはなかなかキラと会うことができないでいるらしい。
そのような相談を私は受けた。
アイリは幼く、純真無垢なところがあり、帽子屋屋敷に訪れるたびに小動物のように駆け寄ってくるため、愛犬…ごほんっ、妹のような存在になってきていた。
そして、城でメイドの仕事をしている私はこの時間帯を含め数時間帯の休暇をもらった。
私の足は真っ直ぐに遊園地に向かっている。
理由?
そんなの決まってる。
キラに一喝入れるため。
ペーターにはてきとうに誤魔化して出てきた。
あんなアイリの泣きたいのに泣けないような顔をしているのを見て、どうして動かないでいられるのだろうか。
アイリの傍にいながらも見て見ぬ振りをしているブラッドは一発ぶん殴ってやろう。
そんな決意をして、遊園地のゲートをくぐったのがついさっき。