The cruel game of heart

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「ねぇ、ビバルディ。キラは役持ちじゃないのよね」
 

呆然とした様子でアリスは女王に尋ねる。
 

それに対し、女王も驚きを隠せないといった様子で答えた。


「ひとつの国に存在できる役持ちは決まっておる。それはあくまで、同じゲームの盤上において。だが、あれは役持ちでも、役無しでも、余所者でもない。もっと、別の……。でなければ、あんな芸当はできぬよ」
 

赤みが買った紫の瞳が見据えるのは孤高の黒。


倒れ伏すスーツの男達の中で、唯一立っているキラ。
 

遠目から見れば無傷のようだが、息は少々乱れているらしく、黒い肩が軽く上下に揺れる。
 

黒の両手にはナイフが握られていた。
 

本来銀色の刀身には人肉の脂や血がべったりとこびりつき、元の色はほとんど姿を見せていない。
 

キラの服にも大量の血液が付着していたが、変色し、黒い生地ではそう目立たなかった。
 

黒い双眸が遥か上を見上げ、黒い腕が大きく振られる。
 

それと同時にライフルでも届きそうにないほど高く伸びた茨のレールの上にあった台車を包み、守るように築かれていた茨の籠が解け、台車はゆっくりと車輪を動かし降下していく。
 


その間、誰も操縦機器には触れていない。



「え、ちょ……!」
 

この世界に来て、だいぶ慣れてきた感覚にアリスは頬を引きつらせた。
 

四人は六人乗りの座席の真ん中と一番後ろに座っていた。
 

操縦機器は一番前にあった。
 

茨のレールは伸びる気配がない。
 

先ほど彼女達の乗る台車は猛スピードで急な斜面、もとい茨の上を駆け上がった。
 

アリスの回想はそこまでだった。
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