The cruel game of heart
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「っ……」
帽子の下には涙を浮かべ、猿轡をかませられた役無しの女の不鮮明な顔があった。
コートがうまく隠していたが、女はゴンドラのシートに括り付けられ、そのおびえた顔は先ほどの男のような堅気でない者の顔ではなかった。
ゴンドラはもうすぐ最上部へと向かうところまで進んでいた。
窓から先ほどの男を睨みつければ、男はにやり、と笑みを浮かべるばかり。
その男の手には何かのスイッチ。
ここまで来れば、誰でもわかる。
起爆スイッチ。
それが押されそうになった瞬間、上から直下した何かが男を直撃した。
「がっ!?」
起爆スイッチはその衝撃で男の手から離れて、男は意識を取り戻すまで石畳の地面と長い長い接吻をすることとなった。
男の傍に転がるのは大き目の木箱。
ビバルディは視界の端に見知った顔を見た。
「アリス……」
茨のレールを走行する台車には人質にされたとばかり思っていた替えの聞かない少女の姿。
そして、金髪の少女に黒髪の人物がその台車に乗っていた。
茨は急速に伸びる。
その緑がビバルディの乗るゴンドラの扉までやってきた。