The cruel game of heart

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顔は青ざめたまま、アリスはたらたらと冷や汗を流した。


「せっかくビバルディが選んでくれた紅茶よ。それにせっかく貴女とのお茶なんだから、そんなこと気にしないで、お茶を飲みましょう」
 

顔面蒼白な、役無しの命を厭う少女は不敵な笑みを浮かべたままの、命に関心を向けない女性の機嫌を損ねないようにと、話題を変えるため脳をフル回転させていた。
 

そんな少女の姿に女性は柳眉をピクリと動かし、先ほどとは別の色を含んだ笑みを浮かべた。
 

その笑みは決して、愉悦ではない。


「ああ、だから城でブレンドした紅茶でつくったスコーンを落としたメイドは、せっかくのアリスとの茶会を邪魔したから、死刑じゃ」


「だからね、ビバルディ!今から紅茶を飲むのに、流血沙汰はゴメンよ!」


ビバルディが、先ほど手を滑らせて焼きたての菓子を落としてしまったメイドに死刑宣告をすれば、恐怖に青ざめるメイドとは対象的に、怒りのために少女は顔を紅くして懇願する。
 

女王、たったその一人だけをその瞳に映して。


「あの、陛下。恐れながら……」
 

そんな中、声をかけてきたのは慌てた様子でお茶会の最中に割って入った役なしの兵士だった。


「何じゃ?わらわは今忙しい」


「っ……」
 

女王だけを映していた瞳が名も無いその兵士に移る。
 


たったそれだけのこと。
 


しかし、少女は余所者という非常に貴重な存在であり、この世界の住人とはまったく異なる価値観を持つだけでなく、予想だにしないことを起こし、退屈を紛らわせてくれる。
 

それ故に、それだけの理由で女王のお気に入りとなる。
 

女王の眼差しが冷たく、鋭利なものとなる。
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