心と秋の空

□12.充:仁
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帝光83―駒木81。
 


この日の練習試合は帝光の逆転勝利に終わった。

でも…、その帰り道、俺は胸のモヤモヤを黒子クンにぶつけた。


「ちょっとだけ…、言ってたことがわかったっス。けど、やっぱわかんねーっス!」

「?」

「すべきことってのが、もし、わかったとしても、それが自分をギセイにしなきゃいけないんだったら、俺にはムリっス!」
 

言いながら思った。


「黒子っちがスゲーのはわかったけど…、それって楽しいんスか?」
 

たぶんこの人はギセイとか考えてない。


「………。楽しくないですよ」
 

だからスゲーと思った。


「負けたら、もっと」
 

この勝利への純粋さを―。

とか言ってみた中二の春。





「それより黒子っちってなんですか?」

「あー、俺、尊敬する人にはつけるんス」

「やめてください」
 

あんま表情変えないくせに、嫌そうに顔を歪める黒子っちにちょっと傷ついた。

そんな顔されるの初めてなんスけど。


「尊敬…。秋野先輩にはつけないんですか?秋野っちって」

「へ!?」

「尊敬してないんですか?」

「や、先輩は…」
 

ちょっと、この人楽しんでない?

心なしか、にやついている気が…。


「いえ、むしろ、空っちですか?」
 

こいつ、腹黒いんだけど!

何なの!?


「青春するのはいいですけど、まずは、自分の女性関係を清算してから、秋野先輩に君の想いを伝えてくださいね」

「え、ちょ…。俺、先輩のこと」

「好きでしょう?一人の女性として。君、部活中、ずっと秋野先輩のこと視てますから。一軍では常識ですよ。君の想い人が先輩であることなんて」
 

マジかよ…。

え、俺、先輩のこと好き?

マジ?

理解者じゃなくて、恋人として欲していた?

いや、でも、……なら、俺、どんだけ遠回りしてんだよ。

どんだけ、先輩に迷惑かけてんだよ。

ムリだろ。

破局もんだろ。コレ。


「…君が誰を好きだろうと構いませんけど、一つだけ言わせてください。君の女性関係における信用は一切ありません」
 

それはしょうがない。

今だって、自分が何人の女と関係をもっているのか把握できていない。

自分でも信用がないと思う。


「…っ。はっきり言うっスね」

「でも、試合前に言ったように、君の負けん気は買いです。それに、先輩は少し変わってますから、その程度の噂には惑わされませんよ。あの人は“人”の本質を視てくれますから。まぁ、一番は銀さんなんですけど」

「……今、明らかに私情入ったっスよね」
 

入った。

てか、なんでそいつが話にでてくんだよ。


「事実です」

「てゆーか、先輩に声かけられるの未だに慣れてないじゃないっスか」

「それは、…アレです」

「ドレ?」

「………秋野先輩に言いつけます。黄瀬君がいじめてくると」

「黒子っち!?」
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