キセキの始まり

□10Q
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「お、出てきた!!」

「全国トップクラスの実力・実績を誇る、女帝、開桜女子学園!」

「対するは創設二年目の誠凛高校!」

「共に『影冠の五華』を主将に据え、開桜は『金のペテン師』、誠凛は『陣風の右腕』を擁する布陣!」

「しかも、誠凛は未知数の力を秘める銀もいるし、もしかしたら…ってこともあるよな!」

「それよりも、『影冠の五華』だろ!好戦的な『紅蓮』と『陣風』の試合なんだから、男子の試合並みに盛り上がんじゃね?」
 

観客席でざわざわと話が盛り上がる中、コートに現れた二校。
 
共に先ほど姿を消したルーキー二人は戻っていた。
 
それぞれアップを始めるが、予想以上に静かな空気に観客達も口を閉ざしていく。
 


『影冠の五華』。



『無冠の五将』と同年代であり、男子の栄光の影に隠れた、逸材の才能を持った女子五人組の総称。

そのうち、開桜の『紅蓮』こと、平岡柚子と誠凛の『陣風』こと、源粟花は中学からの好敵手といってもいい存在だった。

しかし、去年は誠凛は予選一回戦敗退という結果に終わり、二人が同じコートに立つことはなかった。


何故、『影冠の五華』と呼ばれるほどの実力を持ちながら新設校、無名校を選んだ。

そう多くの選手や観客が言ったとしても、柚子はただ待っていた。

再び好敵手と試合ができることを。

一年。

それは彼女にとって長かった。

しかし、期待通りに粟花はこの舞台にやってきた。

他の選手が劣るというわけではないが、粟花こそが柚子にとって最高の相手だったのだ。

肩書きなど気にせずに、全力で向かってくる。最後まで諦めないそのプレイが好ましい。
 
柚子の闘気に当てられるように、開桜のレギュラーも気を引き締める。
 


対する誠凛の主将、粟花は頬を緩めていた。

「うへへ〜」

「オーカせんぱーい。集中しないと、なー子先輩に叱られますよー」
 

呆れたような芒の声に、粟花は慌てて振り返った。

その視線の先には拳を奮わせる撫子の姿。


「だ、だって、久しぶりじゃん。柚子とやんの」

「…そーですねー」

「それにこーゆー緊張感。マジで燃えね?」
 

無邪気に笑む粟花の瞳には確かに戦意が燃えていた。
 
それを認めて、撫子は再びアップに戻る。


「…にしても、『金のペテン師』かぁ。厄介だね」

「うちが抜く!」

「俺が相手しますから、心配しないでください」


粟花の意気込みを折るようにレイが言った。


「……勝算があるの?」
 

探るような葛の視線にレイは苦笑を零した。


「俺は純粋に、この日を待ち望んだ主将同士が相手をすべきだと思ったからです。ルーキーは俺と常磐に任せてください」

「僕も!?」

「というわけで、『紅蓮』さんはお願いしますね。『陣風』先輩」

「まっかせろー」
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