キセキの始まり
□10Q
3ページ/11ページ
「お、出てきた!!」
「全国トップクラスの実力・実績を誇る、女帝、開桜女子学園!」
「対するは創設二年目の誠凛高校!」
「共に『影冠の五華』を主将に据え、開桜は『金のペテン師』、誠凛は『陣風の右腕』を擁する布陣!」
「しかも、誠凛は未知数の力を秘める銀もいるし、もしかしたら…ってこともあるよな!」
「それよりも、『影冠の五華』だろ!好戦的な『紅蓮』と『陣風』の試合なんだから、男子の試合並みに盛り上がんじゃね?」
観客席でざわざわと話が盛り上がる中、コートに現れた二校。
共に先ほど姿を消したルーキー二人は戻っていた。
それぞれアップを始めるが、予想以上に静かな空気に観客達も口を閉ざしていく。
『影冠の五華』。
『無冠の五将』と同年代であり、男子の栄光の影に隠れた、逸材の才能を持った女子五人組の総称。
そのうち、開桜の『紅蓮』こと、平岡柚子と誠凛の『陣風』こと、源粟花は中学からの好敵手といってもいい存在だった。
しかし、去年は誠凛は予選一回戦敗退という結果に終わり、二人が同じコートに立つことはなかった。
何故、『影冠の五華』と呼ばれるほどの実力を持ちながら新設校、無名校を選んだ。
そう多くの選手や観客が言ったとしても、柚子はただ待っていた。
再び好敵手と試合ができることを。
一年。
それは彼女にとって長かった。
しかし、期待通りに粟花はこの舞台にやってきた。
他の選手が劣るというわけではないが、粟花こそが柚子にとって最高の相手だったのだ。
肩書きなど気にせずに、全力で向かってくる。最後まで諦めないそのプレイが好ましい。
柚子の闘気に当てられるように、開桜のレギュラーも気を引き締める。
対する誠凛の主将、粟花は頬を緩めていた。
「うへへ〜」
「オーカせんぱーい。集中しないと、なー子先輩に叱られますよー」
呆れたような芒の声に、粟花は慌てて振り返った。
その視線の先には拳を奮わせる撫子の姿。
「だ、だって、久しぶりじゃん。柚子とやんの」
「…そーですねー」
「それにこーゆー緊張感。マジで燃えね?」
無邪気に笑む粟花の瞳には確かに戦意が燃えていた。
それを認めて、撫子は再びアップに戻る。
「…にしても、『金のペテン師』かぁ。厄介だね」
「うちが抜く!」
「俺が相手しますから、心配しないでください」
粟花の意気込みを折るようにレイが言った。
「……勝算があるの?」
探るような葛の視線にレイは苦笑を零した。
「俺は純粋に、この日を待ち望んだ主将同士が相手をすべきだと思ったからです。ルーキーは俺と常磐に任せてください」
「僕も!?」
「というわけで、『紅蓮』さんはお願いしますね。『陣風』先輩」
「まっかせろー」