キセキの始まり
□1Q
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屋上。
揃ったのは本入部届を持った一年生と監督をしているリコのみ。
そして、校庭には残りの全校生徒。
「つーか、忘れてたけど。月曜って、あと5分で朝礼じゃねーか!」
そう火神の言う通り。
月曜の朝には毎週朝礼が組まれているのだ。
しかし、リコは火神の指摘を受けてなお、腕組をしたまま微動だにしない。
「とっとと受け取れよ」
そんなリコの態度にイラっときたのか、敬語を使うことなく届を渡そうとする。
対するリコは不遜な態度を崩すことなく、言った。
「その前に一つ言っとくことがあるわ。去年、主将に監督頼まれた時に約束したの。全国目指してガチでバスケやること!もし覚悟がないなら、同好会もあるからそっちへどうぞ!!」
「・・・は?そんなん・・・」
同好会に行くくらいなら、わざわざ屋上に来ない。
そう言いたげな火神の視線を受けて、リコは続けた。
「アンタらが強いのは知ってるわ。けど、それより大切なことを確認したいの」
真面目なリコの顔。その表情に一年は顔を引き締めた。
「どんだけ練習を真面目にやっても、【いつか】だの、【できれば】だのじゃ、いつまでも弱小だからね」
その言葉の真意を何となく察した芒は内心、苦笑した。
「具体的かつ高い目標と、それを必ず達成しようとする意志が欲しいの。んで、今!ここから!!学年とクラス!名前!今年の目標を宣言してもらいます!さらにできなかった時は、ここから今度は全裸で好きなコに告ってもらいます!女子の場合は猫耳+スク水+語尾にニャンをつけて丸一日学校生活を送ってもらいます!」
「「「え゛え〜〜!!?てか、女子もパネェ!」」」
「・・・は?」
「ハハハ!ぜってぇソレ萩先輩っしょ!!」
各々反応を見せる一年にリコは改めて説明した。
ただし、芒の笑い声にはリコも驚いていたようだったが。
「さっきも言ったけど、具体的で相当の高さのハードルでね!【一回戦突破】とか、【頑張る】とかはやり直し!」
「ヨユーじゃねーか。テストにもなんねー」
「そーそー。ペーパーテストじゃなくてよかったわ。僕、英語以外マジ無理だし」
「なんで、英語なんだよ」
「だって、アメリカ発祥じゃん。バスケ」
「あ、そっか」
「しっかりしろよ。帰国子女」
そう言いあいながら、火神と芒はフェンスの上に乗った。
「1−B、5番、火神大我!!『キセキの世代』を倒して、日本一になる!」
「1−C、21番、常盤芒!!女子も優勝して、男女で日本一になる!」
そう二人が宣言すると、校庭にいた一年生は驚き、去年も同じ光景を見た二年生はまたか、と呆れ、教師陣は憤慨しながら屋上に向かった。