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志摩は夜中、一人部屋を抜け出した。そして向かうのは愛しい婚約者がいる地下牢。

自分のもつ蝋燭の光だけが頼りに暗い地下への階段を降りてゆく。そしてゆっくりと奥へと奥へと向かう。そこはとても静かで埃っぽく黴臭いにおいが鼻につき辺りは静まり返っており自分の足音しか聞こえない

すると、薄い光りが牢屋に入った人物を照らした


「奥村君!!」


「…志摩っ!?…なんでお前」



志摩は燐がいる牢屋へと駆け寄れば懐からブリオッシュをとりだし燐へと渡す。


「これって…ブリオッシュか?」


「うん…うちの夜食にだされたんやけどうちより奥村君のほうが食べてへんから…」


「サンキューな志摩…けど、お前…痩せたな飯ちゃんと食ってんのか?」


燐はそう言いながらゆっくりと手をだせば志摩の頬を優しく撫でる。
志摩はそれが愛おしくて切なくて悲しそうに笑みを浮かべる


「奥村君のほうが痩せすぎや」


ぽろぽろと涙が溢れては落ちる。できる事なら二人ずっとこうしていたいのに…逃げ出したいのに

全ては自分が無力なゆえに招いた結果なのだ


「…奥村君…ごめんなさい…うちのせいでこんな事になって…」


「お前のせいじゃねぇよ…俺だってお前も国民も守れなかった…」


「違う!!…奥村君のせいやなんかない…全部うちの…んぅ…」


咄嗟に塞がれた唇。燐は志摩にキスをしたのだ。


「…なんでも一人で抱え込むな…」


「奥村君……」


「…誰もお前を責めてねぇし憎んでもねぇよ…だから、んな顔すんな笑え」


「…うん、おおきに奥村君」


志摩はニッコリと燐に笑みを向けた。燐の言葉がとても嬉しくて志摩はまた涙を流した。


「お前…泣くなよ…たくっ」


燐は泣き出す志摩の頬を拭いまた優しくキスをする。けれど今度は深い口づけ。二人の舌が絡み合い熱い吐息が漏れる


「…はぁぅ…奥むら君っ…」


「めっちゃエロい顔だなお前…」


「…奥村君のアホっ!!…」


「悪かったよ…そんな拗ねんなって…」


頬を真っ赤にしながら拗ねたのかそっぽを向く志摩に子供を宥めるかのように頭を撫でた


「別に拗ねてへんし…」


「そうかよ!…ほらっそろそろ戻らないとヤバいんじゃねぇか?」


「…あっ…ほんまや…奥村君、また来るから」


志摩は燐の言葉に慌てて立ち上がり燐を見つめた。


「あぁ…待ってるぜ」


志摩は燐の言葉に頷けば燐の額にキスを落とし後ろ髪を引かれる思いにかられるも牢屋を後にするのだった。

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