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□恋愛事情
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昔々、とてつもなく強い少年がいた。彼は奥村燐といい。一人で熊さえも倒せるような力を生まれながらもち、一部の人々からは勇者と称えられまた一部では悪魔の子だと恐れられていた。

そんな少年はある時、恋をした。その相手は『狂い華』という遊郭にいる遊女
名は志摩廉造。先月、17歳になり、振袖新造だった志摩は突き出しをしたばかりだった。その時に燐はたまたまその志摩の姿を見つけた。遊女には異様なピンク色の長い髪を簪でとめて色とりどりのいくつもの着物を纏い檻のようなサクの中でこちらをじっと見つめる

その神秘的な姿に燐は一目惚れをした。


「…お前名前何て言うんだ?」

「うちに言ってはりますの?」

「ああ…お前に言ってる」

「志摩廉造どすえ…」

「廉造か…俺は奥村燐だ」

「よろしゅう奥村君」

ニッコリと微笑む志摩に燐の心臓の鼓動が高鳴るのがわかった


「会って早々なんだけどよ…俺、お前の常連になってもいいか?」


「…へっ?」


「嫌か?…お前が迷惑なら…諦めるけど…」


「ううん…そんなんやあらへん…うちな今日が突き出しなんです…やからこんなに早く常連さんができるやなんて驚いたんですわ…おおきに奥村君」


と言って燐の手を優しく握りしめて微笑む志摩。そして志摩はその握った燐の手にあるものを握らせればゆっくりと燐の手を離した

燐は志摩が握ってきた方の手を開いた。そこには小さな紅い宝石があった


「それはうちからのプレゼントですわ…それを見せればうちに何時でも会えるさかい…」


「あぁ…ありがとうな」


「うん…」





























〜恋愛事情〜






あれから数ヶ月、燐は毎日志摩に会いに遊郭へと足を運ばせた


「おいっオッサン来てやったぜ」

眠い目を擦りながら燐を見る男

「また来たのか…お前もなかなか物好きだな…あんな異様な女を好むなんてよ」


「へっ…好き勝手言ってろ!!俺はあいつが好きだ…愛してる…だから何時かあいつをこの遊郭から出してやる」


「…あーはいはい…わかったから…部屋はそこを右に曲がって…もう言わなくてもわかってるな」


話が終わる前に走っていく燐の姿に罰が悪くそう言えばため息をつき再び目を閉じた




「志摩、来たぜ」


「待ってたで奥村君」


「相変わらず可愛いな…」


志摩はその言葉に笑みを見せた。燐はあの時出会ってからずっと通ってくれている。それに志摩は燐が自分の事が好きなのも気づいていた
けれど、自分は遊女。恋などしてはいけない立場。それはわかっている…でも彼が放つ言葉は誰の言葉よりも素直で嬉しくて…自分が遊女じゃなきゃ…いいのになんて思ったりして…

「志摩、どうかしたか?」


「…ううん…ちょっと悲しくなったんや…」


「えっ…」


「…野鳥はずっと誰にも邪魔をされずに自由に空を飛べるやろ…けど籠ん中の鳥は籠の中で外の世界など知らずに生涯を終える……うちは籠んなかの鳥と同じなんやって思ったら急に悲しくなったんや…うちはこのまま此処で…人に恋も出来ずに死ぬんやろかって…」


そう言う志摩に燐は胸が痛くなった。そして志摩を咄嗟に抱きしめた


「馬鹿言うな!!…俺はお前を此処から出してやるって約束しただろ!!」


「…っでも!……」


「でもじゃねぇよ…俺はお前に初めて会ったあん時から好きだった…だからお前を今更諦める事なんてもう出来ねぇ…」


「奥村君……」


「絶対に此処から出ような志摩…そしてさ、結婚しようぜ」


「……うん…おおきに奥村君」



彼の優しさが嬉しくて、愛おしくて志摩は燐に触れるだけのキスをした。












しかし、まだ彼等は知らない…


これ以上の悪夢があることを…










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