Book
□B
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「…おはようさん」
「廉造遅せーぞ!!何時まで俺を待たせるんだよ」
「堪忍や今日は寝坊してしもうてな…ってぎょえぇぇ!!!」
自分の目の前には椅子に座り不機嫌な顔をしている奥村燐がいた。昨日、自分を屈辱のどん底にまで陥れた彼、思い出すだけでも腹腸が煮え繰り返る
「柔兄!!なんでこいつがここにおるんや!!」
「なんでってお前感謝しなや!!いつも遅刻ぎりぎりのお前のために生徒会長の奥村君が直々に迎えに来てくれてるんやで」
「はぁ!?そんなん俺頼んだ覚えないで!!」
「ドアホ!!人の恩は素直に受け取っておくもんやでなぁ!奥村君」
「はい、でもなんだか俺お節介しちゃったみたいですね」
「そんなお節介やあらへんあらへん!!めっちゃありがたいで」
「そやで、奥村君」
俺の頭をぐりぐりと痛いほどに撫でながらそういう金兄…それに金兄だけならまだしも柔兄までもが奥村君に賛成しとるし…
俺、完璧に逃げ道失ってしもうてるやん!!
「なにブツブツ言ってるんや!!ほれ、学校遅刻するでさっさと行けや!!それじゃぁ奥村君よろしゅうな」
「はい…金造さん任せてください」
金兄に玄関へと放り投げられては外へと追い出された。
「イテテ…ほんまに朝から最悪やわ…」
痛む尻を撫でながらやれやれと立ち上がろうとすれば目の前に手を差し出された
「大丈夫か?…いつも朝はこうなのか?」
「おおきに…そやね…今日はあんさんのせいで余計酷い朝になったわ」
差し出された手に掴まり立ち上がれば砂や埃を払い落としては鞄を持ち直す
「そりゃ悪かったな…」
「へーあんさんも素直に謝るんや…んむっ!?」
不意に唇に触れた柔らかいもの。それが唇だという事に気づくのにあまり時間がかからなかった
「いやっ!!…っ…」
彼から逃れようと抵抗し彼を突き飛ばそうとしたが彼はすんなりと俺から離れた
「おはようのキスぐらいいいだろ?」
「……っ…」
ニカッと笑みを浮かべて言う彼に、やはり学園のアイドルなんだろう…笑顔はとてつもなく格好よかった
どうしてだろうか頬に熱が集まるのを感じた。どうして…あんなに最低な奴なのに…大嫌いなのに…そんな笑顔で言われたら余計断れなくなる
俺はそんな自分が怖くなって俺はなにも言わずに奥村君から目を逸らした。
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