岩男

□目を背けた世界
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「私はお前を愛せない」


そう静かに告げたメタルがどんな表情をしているのかは分からない。

ただ、拒絶されたという事だけは分かった。





僕はメタルが好きだ。
いつから好きなのかは分からない。
多分初めて会った時からなんだと思う。

元は敵だった僕を優しく接してくれた。
いつも暖かく迎え入れてくれた。
マスクを取った顔が凄くかっこよくてドキドキした。
メタルに会うと幸せな気持ちになれた。

僕はメタルが大好きでたまらなかった。
だから、メタルに告白したんだ。




間違っていたのかな。
伝えるべきじゃなかったのかな。

メタルは僕を見つめている様子だった。
でも今はメタルの顔を見れない。
見るのが怖い。
僕を見られるのが怖い。


僕がメタルの顔を見れずにうつむいていると、小さく息を吐く音がした。

そして、メタルの大きな手が僕の頭を撫で始めた。
まるで幼い子供を慰めるかのように。
可愛い弟を慰めるかのように。


恋愛対象じゃなかったんだ。
メタルにとって僕はまだまだ子供なんだと思い知らされた。

悲しくて、悔しくて、虚しくて、瞳から冷却水が溢れ出してきた。


そんな僕を見て、メタルはただ一言、

「すまない」

と静かに呟いた。


頭を撫でるのを止めて、僕にハンカチを差し出してから部屋を出ていった。

広い部屋に1人取り残されて、絶望感がじわじわと胸に広がり出す。

それでも僕は溢れ出る冷却水を止める術が分からなかった。
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