岩男

□ボクのタイヨウ、キミのヨウセイ
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「ねえ、バブルマン」

青いガラス玉の瞳でボクを見つめる。
その瞳には濁りなんて無く、とてもキレイだと思った。

「君は僕を太陽だと思っているの?」

こてん、と首を傾げて問う。
その仕草が可愛くて愛しくて、思わずロックを抱きしめた。

「うん、ボクはキミをタイヨウだと思っているよ」

そう囁くと、ボクの腕の中で恥ずかしそうに微笑んだ。
でも腕は僕の背中に回ってきて。
そんなロックをとても愛しいと思った。

いつもボクを支えてくれるタイヨウ。
優しくて暖かく包み込まれたボクの居場所。

でも決して手に入れられないタイヨウ。
どんなに願っても傍に居る事は叶わない。
ボクの腕の中にいるのに本当はとても遠いんだ。
それはまるで天と地のように。
どんなに愛していても…
手に入らないんだ。


そんなことを考えているとロックがボクの顔を覗き込んだ
ボクのマイナスな気持ちとは反対にロックの瞳は輝いていた。
にこりと微笑み、こぽりと泡を立てながら囁いた。

「じゃあ、キミは向日葵だね」

「ヒマワリ…?」

初めて聞くコトバに首を傾げる。
すると、ロックは微笑みながら僕の手を握った。

「太陽にそっくりなお花のことだよ」

「…でも、ボクはタイヨウに似てないよ…?」

「似てるよ?…あのね、向日葵はもともと水の妖精さんなんだ」

「ヨウセイ…」

ロックがゆっくりと頷く。
ボクがヨウセイ?
まだ納得できないでいると、ロックがさらに言葉を足した。

「向日葵は太陽に恋をして、その形に似たお花になって太陽を見つめ続けてるんだ」

「…」

「だから、」

そこまで言うとロックは自分の鞄から何かを取り出した。
それは…ロボットのフットパーツ…足だった。
ボク色の、フットパーツ。
驚いて思わずロックを見つめる。
ロックは恥かしそうに笑って、それを僕に手渡した。


「博士に手伝ってもらって作ったんだ。ワイリーさんに着けてもらえるよう頼んだからね。」

「…ロック…」

ロックがボクを抱きしめてくれた。
その優しさがとても暖かくて思わず涙が溢れてきた。

「これで外に出られるよ。水の妖精さんから向日葵になれるんだよ。」

ロックも幸せそうに微笑んでいて、ボクはロックを思い切り抱きしめた。
涙が止まらない。悲しくなんか無いのに。
これが嬉し泣きなのかな。
凄く幸せだ。

「君を独りにさせない、僕がついてるから」

ロックが微笑んでボクにキスをした。
軽く触れるだけのキス。
顔を真っ赤に染めて、それでもボクをしっかり見つめて囁いた。


「太陽だって水の妖精さんを恋をしてたんだ。向日葵になった妖精さんに見つめられるのが好きなんだよ」


そう微笑むロックにボクはもう一度キスをした。
この子となら何処にでも行ける。
ボクを大きな世界へと連れて行ってくれる。
この子が愛しい。
この子を幸せにしたい。

この子と幸せになりたい。

ゆっくりと顔を離すと、二人で笑いあった。

冷たかったこの水の中も、キミが来てくれてとても暖かくなった。
外の世界もきっとキミが居るから暖かいんだ。

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