長編小説部屋

□Episode.02
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 男勝りな彼女の性格がそのまま出ているのか、はたまた法外な値段を言い付けられて罵声を浴びせているのかは不明だが、淑やかに買い物をするといった様子は全く伺えなかった。
 彼女は剣で更に威嚇すると店員は両手を広げて観念した。他に聞こえないように小声で耳打ちをし、引き攣った笑顔を向けている。店員がお金を受け取った金額は八百キュラ。どうやら穏便ではない値引き交渉が成立したようだ。
 デイジィは満足気に剣を鞘に収めてこちらに向かって歩いてくると呆然としていた二人と目が合い、一瞬だけ目が見開いたが小さく鼻を鳴らしてそのまま通り過ぎていった。少しばかり走った緊張に二人は小さな吐息を漏らす。

「同じ町に来たんだから会うのはありえる話だけど……こうも早く会えるとはね」

 カミュが零した言葉に対してジョルジュは満面な笑顔だ。どうも小屋を出た後から様子がおかしい。まだ幻惑草の効果が残っているのかと疑問を浮かべながらも、二人は分かれて本来の情報収集へと散らばった。


 ミカエルが露店にて買い物をしている時、収集を終えたであろうカミュの姿を発見した。彼女を呼びながら小さく手を振ると、大きな胸を揺らしながら小走りに駆け寄ってくる。

「どう? 今夜の宿は見つかったかしら」
「大丈夫です! 少しばかり小さいですがゆっくり出来る宿ですよ」
「さすがね。所で……ジョルジュ見なかった?」
「……こちらに向かっていますね。ゆっくりですが近づいてます」

 彼女の言葉にカミュも気配を探ると、確かにゆっくりではあるが近づいてきている。だがあっちこっちと動いて真っ直ぐ歩いていないのは余所見や道草を食っている証拠だ。

「本当に……あの子らしい分かりやすい動き方ね」

 頭を垂れながら苦笑するカミュに優しい微笑みを返す。
 三人が合流して聞いた情報を交換し合い、その中でジョルジュが得意気に胸元から一枚の紙切れを取り出した。

「じゃっじゃーん、世界地図はっけーん♪ これで道に迷う事なく進めるわよぉ」

 現在で地図はとても貴重な物で、旅人にとって最短距離で進めるという事だ。二人は予想外の収穫に歓喜の声を上げたが、冷静を取り戻したカミュが途端に眉を顰める。

「ちょっと……やけに線が歪んでない? それに思いきり手書きっぽいんだけど」
「貰えなかったからあたしが書き写してきたの! まぁ……ちょっと面倒だったけどね」

 その言葉を聞いて疑り深い目で彼女を見据える。特に最後の言葉が気になっているようで、そんな不信を払拭すべくミカエルが提言する。

「大丈夫ですよ、例え正確でなくともこれをベースとすれば滞る事なく進めます!」
「……正確じゃない?」
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