掌編小説部屋

□Episode.06 恐怖のお化け屋敷!
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 ルドラ城の前にある噴水場では鳥達が歌い、花達がいつも満面な笑顔を向けている場所だ。この城下町の民や動植物が温和な時間を共存でき、自然に誰もが集まる安らぎの空間でもある。暖かい太陽の光が降り注ぐお昼を過ぎた辺りの時間帯に、ジョルジュ率いる仲間達が集まって談笑をしていた時だった。

「ねぇねぇ、知ってる?」
「……ん、なにかな?」

 突如話を振って来たジョルジュの言葉にソフィアが興味を示し、金色に輝く髪を柔らかく靡かせながら振り向いた。目が合うと彼女の瞳はいつもになく輝いている。
 この目は何かに強い興味を持っている証拠で、心情を分かっているだけにそれを見るとつい口元が綻んでしまう。少しだけ身を乗り出し、話を受け入れる姿勢を取った。

「アネッザにある小さな遊園地に新しいお化け屋敷が出来たんだってさ♪」
「そう言えば、新しいアトラクションが出来たって話をお客さんから聞いたかな!」

 ルドラから少し離れた場所にはアネッザという小さな村があるが、小さいからと言って廃れている訳ではない。この村で代表的な『アークバード』は、超大型の飛翔モンスターを飼い慣らして全世界へと旅人を送る航路を見つけたのだ。その発展力は大陸を統括する代表の城にも負けない勢いを持つ発展途上の村である。
 その村に全世界の子供達を対象とした遊戯場があるのだが、聞いた話では大人でも楽しめるアトラクションを作ったらしい。となればジョルジュが反応しないはずがないのだが、皆の中で不穏な影を纏って反応した人物が一人いた。

「皆で見に行こうよぉ♪」
「うーん、今日はお店も暇だからお母さんだけでも大丈夫……かな」」
「他の皆も大丈夫だよね! じゃあ、アネッザにしゅっぱぁーー……」
「あたしは行かないわよ」

 冷めたようにジョルジュの言葉を打ち切らせ、決定を拒否した人物………カミュだ。腕を組み、長身であるが故に見下ろす視線からは思い切り威圧を感じる。

「えぇー……なんでぇ?」
「行かないったら行かない。行くんならあたしは帰るわよ」
「いいじゃない! 皆で行けばきっと楽しいわよぉ♪」
「あんた達は楽しいかもしんないけど、あたしは行きたくないの!」

 断固拒否の態度を示すカミュに呆然と口を開ける。彼女の隣にいたミカエルがその真意に気づいた。
 度胸もありジョルジュと同等の闘気を持つ好戦的な彼女であるが、昔からお化けの類がとても苦手なのだ。その理由は幼い頃に読んでもらった絵本にあるのだが、執事のリアリティ溢れる演出に凄い恐怖を感じた事が切欠となって以降もその類になると腰が竦むらしい。人は見かけによらないという言葉があるように、彼女にもその言葉が該当されるようだ。
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