長編小説部屋

□Episode.07
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 村の奥には小さな噴水があり、白色の法衣を纏う老人が杖を支えに座っていた。恐らくあの人物がレッドアイの神父だろう。着ている服が他の人とは明らかに違う。
 近づいて声を掛けるが……無視されてしまった。無視されたというより、赤子のように何度も首を擡げているのは眠っているのだろうと思われる。
 更に近づいてミカエルが神父の肩を軽く叩きながら呼び掛ける。こちらも目的があってこの村に来たので、それを完遂させなければ先には進めないのである。だが優しく呼び掛けるも、神父はだらしなく口を開けて眠り続けていた。
 カミュの眉が小さく反応した頃に、次なる行動を起こしたのは言わずとも分かるパーティ代表のジョルジュ。大きく息を吸い込んで神父の福耳に口を近づけた。

「おじーちゃん!!!!」
「だにぃっ!?」

 大声に驚いた神父は目を飛び出させた後に左胸を掴んで白目を向いていた。老体にはかなり厳しい起こし方だが、今はそんな事を言っている暇はない。
 だがどうやら様子がおかしい。神父は向こうの世界へと旅立とうとしているではないか。慌てたミカエルが回復の白魔法を唱えて強引にこちらの世界へと呼び戻した。
 無事に目を開けた神父は目前にいるパーティを見遣りながら、今だ理解していない現状を把握しようとしている。いきなりモンスターに襲われたとでも思ったのか、それともモンスターと間違えられて攻撃されてしまったのか。どう解釈したかは神父の心情だけが悟る所だ。

「おじいちゃん、おはよ♪」
「おはようじゃないだにぃ! 心臓マヒであの世へ行ってしまう所だったにぃ!」

 茹でた蛸のように顔を真っ赤にして捲し立てる神父はとても興奮している模様。気性の荒いモンスターの如く、今にも襲い掛かってくる程の勢いだ。

「おじいちゃんはレッドアイの神父さん何だよね? この石に念を入れてほしいんだ」
「念を入れてほしい……だにと?」

 ミカエルが取り出した星の砂を見た後、皆を一瞥して鼻を鳴らした。

「……嫌だに」
「ちょっと、何で入れてくれないのよ! あたし達はただ単に星の砂を集めてる訳じゃないんだから!」
「お主らは若いだに。わざわざそんな危険な場所へ向かわす事は神の御心に反するにぃ」

 神父の言葉にミカエルは言葉を飲み込んだ。態度では素気無いようだが、その言葉には皆を心配する念が込められている。未来のある若い芽を危険に曝して啄ばむような事は出来ないと言っているのだ。
 眉を顰め、これ以上は何も言う事が出来なかったが、納得いかないのはジョルジュ達である。カミュは長身を活かして上から強烈な威圧を与え、横からはデイジィとジョルジュが攻め、ソフィアは正面から。後方は小さな噴水があるので神父の逃げ場は全くない。

「わ、わ……分かったにぃ! 念を入れるから離れるだにぃ!!」
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