長編小説部屋
□Episode.06
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橋は大陸の尖がった部分同士に架けてお互いに行きき出来るように陸路を繋げている。皆は順風満帆でその場所に向かっていたのだが、先を見ていたジョルジュが眉を顰めた。
その小さな様子に気付いたカミュは彼女に問い掛けるが、相変わらず沈黙のまま。何を思ったかいきなり走り出したので皆が顔を見合わせる。
「ちょっと、どうしたのよー?」
呼ぶ声にも反応を示さず、ひたすら真っ直ぐ走っていく。次第にその姿が米粒大になり、立ち止まった橋の袂(たもと)から向こう岸の大陸を見据えている。追いかけたパーティも到着した頃には、その意味を理解して言葉を無くしていた。
「な……なんてこった」
「……しくった」
ジョルジュは悔しそうに親指の爪を噛みながら小さな唸り声を上げた。皆が呆然と見ているその先、それは大陸間を繋ぐ橋が無残にも決壊していたのだ。
恐らくモンスター達が橋を破壊したのだろう。他に陸路は無く、新大陸を目の前にして渡る術を失ってしまい、士気は衰えてしまった。
思い切り助走を付けて大陸間を飛んだとしても、この距離では当然届くはずがない。仮に飛んだ後は泳いで到着しなければならないが、海を住処にしているモンスター達は確実に襲ってくるはずだ。水中では動き辛い上に、己の場とするモンスターに軍配が上がるのはほぼ確実である。
「まいったわね。こうなってたなんて……予想外だわ」
「デカルロ経由で行くにしても今の私達では同じ結果に成りかねません」
「クソッ! じゃあどうやってレッドアイに渡ればいいってんだ!!」
怒りに声を荒げるもやり場がなく、足元にあった小石を怒りに任せて投げつけると、何度も大きく海面を跳ねていく。
「…………。」
「そうだ、確かアネッザにはアーク・バードがあるじゃない? それで飛んでいけば……」
「バードは飛翔するモンスターの所為で、当分は飛べる見込みがない。こうなったら橋を建てるか水の上を歩くしか道はないぜ」
ソフィアの提案も現状況の告知により直ぐに破棄されて肩を落とす。次の目的地までは目前だった。だがどうにもならない現実に、皆の落胆が大きくなっていく。
だが、顎に指を添えて先程から黙って考えているジョルジュ。パーティ内で一番騒がしい人物が珍しくも静かに考え事をしているのだ。
策に煮詰まり、どうする事も出来ずに皆が沈黙していたその時……。
「見えた!!」
突如高らかな声が全員の意識を集約させ、視線が一点に集まった。一体何が見えたのかと問い掛けると、ジョルジュは確信を得ているように拳を握り締めていた。
橋を渡って新大陸へ行かなければ先に進む事は出来ず、後退なぞ当然皆無である。だが現状は橋が壊れ、渡る事が出来ずに此処で立ち往生を余儀なくされた。空路の方法として「アーク・バード」を提案したが今は運休状態である。既に決まっていた運命に抗う事が出来るのか……。
だが凛とした目は見えなかった未来がまるで見えているかのようで、皆はそんな彼女を見つめずにはいられない。
その場所からほんの少しだけ離れ、肩幅よりも少し広めに足を広げて腰を落とした。引き上げたのは青を纏う闘気。右手に集約させて気弾へと変換させる。