長編小説部屋

□Episode.02
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 洞窟を抜けたこの地はルドラ大陸とは色々な物が違うのは当然で、前方を見れば出現したモンスターとデイジィが戦っている。援護しようと駆け出すも、追い付いた頃には大きな闘気と鋭い剣技によって一掃されていた。

「ふぇ……いとも簡単にやっつけちゃったわね」
「フン、この程度で苦戦する訳がないだろう」

 実際に彼女は三人を上回る闘気を持っている。培ってきた経験と剣術を考慮すればまともに戦えば勝算は薄く、敵に回れば苦戦を強いられるであろう相手にジョルジュは口角を上げて話しかけている。

「ねぇ、デイジィ? デイジィったらぁ!」
「五月蝿い! それに着いて来るな!!」
「だってあたし達も進む方向がこっちだもん」
「……勝手にしろ!!」

 厳しい眼光にもめげずに前方を歩くデイジィの後ろを歩き続けた。
 森の中や草原を歩き、ひたすらジェネシス城へと歩みを進める。途中で出現したモンスターは確かにレベルが高くなってはいるが、持ち前のコンビネーションで難なく戦闘の山を越えた。

「ジョルジュ、見えましたよ!」

 ミカエルの声に前方を見遣ると灰色の建造物が小さく見える。ようやく目的地に到着するのだ。初めてルドラ以外のお城を目にする三人の顔が綻ぶ。
 明るかった空も景色が焼けてオレンジ色に染まっている。真っ暗になればモンスターの出現率も格段に上がるが、到着する頃にはその時間帯を回避出来るだろう。デイジィもその事は分かっているようだ。
 一同は見える先へと少しばかり足早に歩みを進めて、城下町へと足を踏み入れた。


 城内に入ればルドラよりも賑わい、幾つもの露店が立ち並んで店員がお客を呼び止める為に大きな声を上げている。
 城に来たら先ずやらなければならない事があるがそれは明朝にしか行なえない。となれば今出来る事はこの城下町での情報収集だ。これだけ人がいれば世界の状況や次の城に行く経路など比較的容易に聞く事が出来るだろう。
 ジョルジュとカミュは情報収集の為に、ミカエルは今夜泊まる宿と役に立つ道具を探しに四方へ散らばった。
 人混みをすり抜けながら歩いていると、一際大きな声が上がっている武器屋があるが、客を呼ぶには相応しくない罵声に近い大声である。二人は顔を見合わせながらその場へと近寄ると、少しだけしゃがれた女性の勢いある声が耳に届いた。

「ふざけるんじゃない! こんな剣に千五百キュラも出せるはずないだろ!!」

 彼女が手にしているのは鋼鉄製の剣。遠目からは良さげな感じがするも、こちらは素人である。こんな値引き方法も有りなのかと肩を竦めて視線を外すが、聞いた事のある声と見慣れた後姿に再び視線を戻す。
 赤茶色の髪と鋭い眼光が威圧感を醸し出し、お城に到着するまでずっと追いかけていたデイジィの後ろ姿だった。
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