長編小説部屋

□Episode.01
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 柔らかな日差しが降り注ぎ、流れる風は穏やかに通り過ぎていく。そんな安穏な風景の裏では、モンスターに襲われる恐怖に怯えながらも日々を精一杯充実させて暮らしている人々がいた。
 此処は発展を信条とするミネア女王が統率する城下町ルドラ。活気に満ちた町のある一軒の家に軽快な呼び鈴が響き、呼ばれて椅子から立ち上がったのはルドラで一番活発な女の子と周知されているジョルジュだ。

「お姉ちゃん、もう行っちゃう……の?」
「うん、大きなお土産を持って帰るからね!」

 妹のララが気落ちしているのも、今日から姉が仲間達と旅に出るからである。落ち込んだ彼女の肩にそっと手を置いて、満面な笑みを向けながら家を飛び出して行った。

「ごめんごめぇん。カミュ、ミカエル、お待たせ!」
「アロ〜ハぁ〜、全然待ってないわよ!」
「おはようございます!ジョルジュ」

 外で待っていたのはこれから共に旅立つ二人の仲間。向けられた笑顔に自然と口角も上がり、お互いが顔を見合わせると希望と興奮に満ちた表情だ。ジョルジュは腕を組み、凛とした目で二人を見据えた。

「さぁて、今からあたし達の旅が始まるわね。世界がどんな事になっているのかは分かんないけど、とにかく向かって行くのみよ!」

 彼女の意見に反論を唱える事無く静かに頷く二人。
 平地ではモンスターに襲われるから外には出るなと幼い頃から教えられてきたが、家でじっとしているのが嫌な性格のジョルジュは期を満たして旅立ちを決意した。
 その目的は失われた守護の恩恵からなる光の五芒星を蘇らせる事。溢れる好奇心は幼少の頃からいつも旅に出る事を夢見ていた。
 この旅を決行して完遂する事は皆が平和に暮らせる世界の再構築に繋がる。更に言うなら世界中を旅すればもっともっと楽しい事が待ち構えているはずだ。

「じゃあ、しゅっぱぁぁーーーつ!!」

 小鳥が囀る空に握り拳を高らかに突き上げると皆もそれに応えた。想像し、興奮して追い求めた想いがたった今から現実となるのだ。その勢いのまま颯爽と見慣れた景色を通り過ぎて、町の出入口を通過する。
 町を出てほんのすぐ後の事であった。地震が起きたように地面が小刻みに揺れ始め、次第に駆け寄るような重低音までもが響いてくる。音源であろう左方を見遣ると遠くの方では砂埃が舞い上がっているではないか。
 二人は顔を見合わせて首を傾げるが、更に轟いてきた咆哮に口をあんぐりと開けた。
 近づき、大きくなっていく煙の合間に見えたのは深緑色の体躯と鋭い眼。感じる邪心と脅かすような雄叫びはモンスターに他ならない。
 これだけ距離が離れているにも関わらず確認出来るという事は、相当の大きさと推測するもジョルジュはまだその存在に気付いておらず、カミュがそっと肩を叩いて呼び止める。
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