長編
□You are my...
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「何してんすか。」
かったるい気持ちを抑えて教室に入ると、俺の席には見慣れたアイツが座っていた。
「ようっ、今日も遅いな?」
気持ち悪いくらいにニタニタと意地悪な笑みをこぼしながら、俺を見上げて来るソイツ。
ベルの鳴る三分前となりゃ、確かに遅いがそんなことは今関係ない。
問題は、コレ。この毎日欠かさず俺の席を陣取ってる男。
「さっさと帰ってください、先輩。」
どかす訳にいかないので、とりあえず鞄を床に下ろす。全く、毎日毎日何のつもりだこの人。
「そんなこと言ったら先輩が可哀相だよ、飯田君。」
後ろの席の古賀が口を出す。毎朝こいつが先輩の話し相手をしているせいか、根っからの先輩サイドらしい。
「そうだよ。お前、俺が先輩ってことわかってんの?」
ぶつくさと文句を言いながらもやっと先輩は俺に席を譲る。まぁ、こんな奴でも先輩だから俺はそのまま立っていた。
「パワハラだって先生に訴えたら止めてくれますか?」
「ヤダ。」
即答だった。潔いな、やっぱ。
「・・・。」
学校では嫌でも浮く茶髪、長身、切れ長な藍色の目。どこぞとのハーフということもあって、校内では専らの二枚目担当。他校の女子にも人気があるくらいの芸能人的な存在。
そんな先輩がどうして俺にちょっかいを出すのかがわからなくて困っている。
先輩の彼女に手でも出しただろうか。
いや、まずこの学校に入ってから彼女もいないしな・・・。
と、頃合い良くベルが鳴り響く。
「うわっ、やっべ!!」
さっきまでの余裕なんてさておき、先輩は慌てて自分の教室へと走り去った。
高二と高三の教室は同じ階だが棟が違う。俺は西棟、先輩は東棟。しかもクラスの関係で、お互いのクラスは両端に位置している。ベルを聞いてからのスタートじゃ、この校舎横断コースで間に合うはずはない。
「ざまぁみろ。」
本人がいない以上、俺はタメ口でそう言った。