短編

□嗚呼、愛してる
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忘れたい。想いたくない。諦めたい。




※銀沖




ここは何処だろう。
……雨の音がする。
…随分強いな。


あぁそうだ、万事屋の旦那に会いに来て…、旦那に抱きついたら旦那も抱きかえしてくれて、…それでどうしたんだっけ?

ジンジンする頭を抑えながら身体を起こす。


暫くして気がついた?と旦那の声がした。
はい、って答えると、旦那は笑って私の横にあぐらを掻いた。

あの後どうしたんでしたっけ?私、旦那に何かしやした?
そう聞くと、何も。って返されたから安心した。

でもやっぱり旦那はドエスで、ていうか何かってなに?なんて聞かれたから、変なことして旦那の勃たせちゃったとか。って言ってみた。

こんだけ言えば言い返してこられないだろうって思ったんだけど、旦那の方が一枚上手だった。

そういう意味のなにか、だったら、された。
…驚きよりも一体なにをしてしまったのか気になった。

旦那は察してくれたのか、私がなにをしてしまったのか教えてくれた。


「だってさ、冗談でも好きなんです。とか旦那のこと好きになりたい。とか言われて、身体は熱いのか冷たいのか分かんないし、顔は熱いし赤いし…。
気がついてなかったと思うけど、涙ボロボロ流してるし、目も赤いわ息は熱いわ…。
銀さんのドエスに火が着いちゃって大変だったんだよー?
すごく虐めたかったんだけど、風邪ひいているみたいだったからやめた」


あとは私がグッタリしていると思ったら、気絶していたから布団に寝かせておいた。と言われた。

私が直接なにかしたって訳じゃないみたいだから安心した。


「旦那、」
「ん?」
「冗談じゃありやせんよ」


痛む喉を我慢して伝える。


「なにが?」
「旦那こと好きになりたいってやつでさァ」


好きなんです。はある意味冗談じゃないけれど、ある意味冗談だったから。


「そんなこと言われちゃうと、銀さん困っちゃうな」
「…ごめんなせェ」


迷惑なのは分かっている…。だけれど、このまま土方さんを想い続けているのも辛いなら、旦那のことを好きになりたい…。
姉上が好きな土方さんを、このままたらたら想いたくない。諦めたい。この想いを忘れたい。

私が辛いからじゃない。私が土方さんを想っていても、誰も幸せにならないから…。

姉上だって土方さんのことが好きで、土方さんも姉上が好きで、私が邪魔するわけにはいかない。
私がもしも想いを伝えることがあったとしても、土方さんを困らせるだけだし……さ。


「大丈夫?」


そう聞かれたから大丈夫ですよ。って答えようとしたんだけれど、旦那の右手の人差し指の関節が、私の左頬に当たったから、驚いて言えなかった。


「相当精神的に参っているんだ?」
「……………いいえ」


参ってなんていない。


「………そう?なら良いけどよ」


頭がジンジンする…。


「俺は、土方くんをこれからも好きでいるのはオススメしないね」
「…はい」
「叶わないどうのこうのじゃなくて、ああー、なんだ、上手く言えねェけど、このままの調子だと…身体が持たないっつーか、心が疲れるっつーか…何て言うんだろうな…」
「ありがとうございやす。旦那が言ってくれていることは、なんとなくですが分かりやす」
「…そう?」


多分言いづれェんだと思う。


「つまりは、私が重いってことですかね?」
「………………うん、まあ、」


旦那の顔に、気まずさが浮かぶけれど、


「気にしなくて良いですよ。自分でもストーカーっぽいなーとも、自分はすごい重いんだろうなーとも思ってたんで」


自分で気がついた訳じゃないけれど。


「…そうなの?」
「山崎にいきなり、土方さんを見る目が異常って言われたんでさァ」


山崎は私が土方さんを好きなことに気がついていた。
だけど、土方さんを見る目が変、なんて可愛い言い方じゃなくて、異常。なんて言われて、笑えるくらいに、自分が相当重いって分かった。


「で?これからどうすんの?」
「頑張って忘れてみようと思いやす」
「…それが良いかもね」


すごい時間がかかるかもしれない、今夜も土方さんの部屋に行って、土方さんに後ろから抱きつくかもしれない。
けれど、少しずつ、薄れていくように…なんとかする。

私が土方さんを忘れるための時間の間に、土方さんが私を好きになるなんてないと思うし。


「忘れるための、一番良い方法教えてあげようか?」
「何ですかィ…?」


一番良い方法?
真選組を辞めるとか?
…嫌だ。


「土方くん以上の良い男に惚れれば良いんだよ」


なるほど、でも、土方さん以上の…?


「そんな男いやせんよ」


近藤さんを除く。


「いるでしょ。目の前に」


そう言いながら自分を指差す旦那。


「…ああ、すいやせん。いやしたね」
「うんうん」


腕を組んで頷く旦那。

うん、旦那を好きになるのが一番良い。
良い男だし、土方さんに惚れてなかったら絶対惚れてた。


「まあ今日はもう帰りな。送ってくから」
「…良いんですか?」


気がつけば雨はもう止んでいた。


「風邪ひいている女の子を一人で歩かせられないでしょ」
「…ありがとうございやす」


布団から出て、旦那の後に続いて歩く。


「帰ったら、温かいお茶でも飲むんだよ」
「…はい」


喉痛いの気がついてくれたんだ…。


「今日は土方くんのこと想ってないで、しっかり寝な」
「はい」


そうなんでさァ。
夜寝るとき、土方さんのことばっかり考えてて最近寝不足気味…。

「まあ薬飲ませたから大丈夫だと思うけど、今度は虐めさせてね」
「は…い?」


薬なんて飲んだっけ…?




*・*・*・*・
長い…!
こんなに長くするつもりはなかったんですが、長くなってしまいました。
二話に分けて良かった…!
そろそろ神威くん出したいです。




*20120617
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