短編

□嗚呼、愛してる
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雨の中でオモウこと




※銀沖




雨が降っている。
私はもうずぶ濡れなのに、寒いのに、冷たいのに。
でもなぜかどこか他人事のように感じる。

今日は土方さんと二人きりの見廻りだった。
だけど急に土方さんに用事が出来ちゃったから、私一人で見廻りしている。
仕方ないし、仕事だから文句なんて言わないけれど、雨なんか降られると、考えが暗くなる。

ずっとこのまま、土方さんに想いが伝わるだけで、なにも変わらないんじゃないか…とか考えちゃう。
いや、想いが伝わることさえないかもしれない。

………雨が強い。
雨が痛い。
雨が冷たい。


無性に誰かに抱きつきたい。泣きつきたい。すがりつきたい。

…あぁ、情けない。

そういえばこの辺りだったな、万事屋。

…少しだけ、お邪魔しようかな。

そう思って万事屋の方へ歩き出す。









やけに遠く感じたけれどなんとか着いた。
インターホンを押す。


はぁい、と気だるい声が聞こえてきて戸が開く。

こんにちは、お久しぶりです。
会ったらそう言おうと決めていたけれど、言えなくて、俯いたまま何も言わず、私の暗い雰囲気で何かを察してくれたみたいで、何も言わずに家に入れてくれて一つのソファーに二人座った。

どうしたの、そう聞かれて咄嗟に
旦那に会いに来た。と答えた。

そんな顔で言われても嬉しくないってって言われちゃったから、

好きなんです。

思いきって言ってみた。
そうしたら旦那は告白?って冗談っぽく言ったから、告白ですよ。
って答えた。

でもそれ、土方くんには言ったの?って言われて、どうして?って聞いたら、見ていれば分かるよ、土方くんが好きなんでしょ?なんて言われて、泣きたくなった。

こんな状況だからか、旦那のこと好きになりたいって勢い任せで言ってしまった。
まあ、子供に興味ないって言われたんだけどね。

子供とかガキとか、よく土方さんが私に向かって言いやがるから、今言ったって仕方ないのに、もう十八でさぁ。って言ったんだけど、思ったよりか細い声しか出なかった。

よっぽど私が弱々しかったのか、旦那は頭を撫でてくれた。
涙で滲む目で見ると、旦那が土方さんに見えた。

なんだか身体全体が熱くて、思考回路が上手く回ってくれなくて、すごく近くにいる旦那に思わず抱きついた。

ボーッとしている頭で嫌がられるかな、なんて考えていたけれど、旦那も抱きかえしてくれたのを覚えている。

そのあとは、…よく覚えていない。
風邪をひいていたみたいで、起きた時には布団に寝かされていた。




*・*・*・*・
次に続きます。
やましいことはなにもないです。




*20120616
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