短編

□猫の日〜いつもあなたを想ってる〜
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※猫の日記念小説
※恋人設定
※糖分少ない
※いつ頃の話?と突っ込まないで下さい




いつもの通り私はアイマスクをして自分の部屋で昼寝をしようとしていた。

…ただ今日はいつもの通り、にはいかなかった。


「なにお前」


私が自分の部屋の障子戸を開けると、呼んでもいない来客が一人。…いや一匹。

何とも珍しい毛色。
桃色のような橙色のような…。
…神威の髪の毛の色に似ている猫。
さらにアンテナもついてやがる。


「どっから入ってきたんでィ…」


どうしてよりにもよって私の部屋に…。

私は障子戸を全開にして猫の側へ行く。
猫は警戒心が強いから部屋を出て行ってくれると思ったから。
が、私が近づいても猫は逃げ出さない。
それどころか私に擦り寄ってくる。

……猫ってこんな、初対面の人間になつくんだったけ?
それとも何か食べ物でも欲しいのかな?


「…擦り寄られてもアンタのこと飼えやせんぜ」


真選組の屯所で動物を飼うわけにはいかねェ。


「にゃあ」


猫が短く鳴く。
弱々しそうに聞こえるかもしれねェが、そんなことはない。


「…眠いんだけど」


そう睨んでも猫が出ていくことはない。


「私は寝る。…さっさと出て行きなせェ」


押し入れから掛け布団を出してアイマスクを装着。
掛け布団にくるまり、寝る準備は終わった。


「にゃあ」


まだいる。


「さっさと出てけ」


長く居座られると愛着も情も湧いちまう。
そうなっちゃ面倒だからねィ。


「にゃあ」


猫が近づいて来るのが気配で分かる。

…本当にこの猫何なんでィ。…無視しよう。


「にゃあ」


猫が布団の隙間から入ってくる。
…もう勝手にしろ。
あとで土方さんの部屋に置いときゃいいや。


ん…?この猫……アレ、オスなのかな…。いやいやいや!どこに擦り寄ってんだこの猫!


「なにやってんでィ!」


私は勢いよく起き上がり、これまた勢いよくアイマスクをはずす。
猫は何だか満足そうな顔をして足で頭をかく。腹立つ…!

この猫神威みたいだな…!

人が嫌がることでも自分が満足すればどうでもいい、みたいなところが。

……予定変更。
今すぐ土方さんの部屋に置いてこよう。

猫の首根っこを掴んで持ち上げ……ようとした。


「にゃあ…!」


猫は華麗に私から逃げるがまた擦り寄ってくる。
極めつけは上目遣い。

うっ。
………可愛い。
ずるい、そんなうるうる目で……見んなああぁぁ!


「にゃっにゃっ!」
「なんなの…」


掴もうとするが猫はスルスルと私の手から逃げ惑う。
そんな攻防が五分ほど続いた。


「…もういいや」


私は猫を追い回すのをやめた。
面倒になったし、飽きてきたし。
第一にもうお昼ご飯の時間になってしまった。


「にゃあ〜」


私が追い回さなくなったらまた擦り寄ってくる。


「ここで大人しく待ってなせェ。…後でミルク持ってくるから」


そう言って廊下に出て障子戸を閉める。
自然と急ぎ足になる私。…違う。断じて違う。
…別に猫のことなんか気にしてない。

やましいことなんか無いのに、食堂の戸から顔だけ覗かせる。


「沖田隊長?」
「っ!……なんだ山崎か」


驚かせんな。


「なんだじゃないですよ〜。…どうしたんですか?」
「…なんでもない」


やっぱり鋭い山崎から離れて食堂に入る。

…さっさとご飯食べてミルク持っていこう。




で、今冷蔵庫前にいる近藤さんに見つかってしまった。
まあ見つかるもなにもないんだけど。


「どうした総羅!」


声デカい声デカい!
何人かの隊士がこっち見てるし!


「冷蔵庫…」
「む?おおそうかそうか!すまんな!」


声デカいヨーー!
近藤さんの声好きだけど今は困る!!


「喉渇いたのか?総羅はほうじ茶が好きだったな!冷えてて美味しいぞ〜」


うっ。
そう言ってほうじ茶が入ったペットボトルを笑顔で差し出されても…困る…!


「いや、」
「ん?」
「ぎゅっ牛乳ありやすかい?」


ミルクと言わなかったことは評価して欲しい。
ただ英語にしただけだけど、ミルクっていうと動物の匂いがするような…気がする。


「牛乳?」
「あい」


私がそう言った途端ざわつく食堂。

のおぉ…!日頃の行いのしわ寄せがこんなところでっ!


「沖田隊長!?熱でもあるんですか!?」
「バッカおめっ!変なモン食ったに決まってんだろ!」
「無理して飲まなくても良いんですよ!」
「あの沖田隊長が!?」
「牛乳!?」


口々に言い出す隊士たち。
失礼な。


「飲めねェんじゃねェ!飲まないだけでさ!」
「それを人は飲めないっつーんだよ」


横から言ってきた男、土方。


「アンタにだけは言われたくねェ」
「どういう意味だ」


土方を睨むと睨み返してくる。ムカつく。


「まあまあまあまあ、ところで総羅、急に牛乳飲みたいなんてどうしたんだ?」


近藤さんが仲裁に入って話題を変えた。
さすが近藤さん!かっこいい。


「特に意味はないんでさァ。ただなんとなく…飲みたいなぁって」
「ほほぉう……?」
「そうかそうか!大きくなったなあ総羅!お父さんは嬉しいぞお!」
「…いつから父親になったんだ」


お父さん…!わあ…!

…おっと、忘れるとこだった。


「じゃあ牛乳貰ってきやすね!」
「おう!持ってけ持ってけ!」
「ありがとうごぜェやす!」
「何で持ってくんだ」


やけに時間食っちまった!急いで戻らねェと!

私は土方を無視し、食堂から出ると小走りで自室に向かう。









よし。やっと戻ってこられた。
辺りを見回し、周りに誰もいないことを確認。
障子戸を控えめに開け、猫がどこにいるか探る……部屋の真ん中にいた。


「遅くなってごめん。ミルク……あ」


今気がついた。
…お皿持ってきてねェ。でもあす(そ)この場面で皿まで持っていくのは不審すぎる。完璧動物だってバレるじゃねェか。


「ええっと…」


私の部屋にお皿や、受け皿に出来るような者は無い。

どうしよう…。


「にゃあ」


猫がまた擦り寄ってくる。
とりあえずしゃがんで猫の喉を撫でる。

可愛い…。
……………あ〜、情が湧いてきちまった。
まずい。

喉を撫でていた手を引っ込めると、にゃあ?と首を傾げる。

はうぅ…。
…ってダメでさ!猫なんて飼うわけにはいかねェ…!


「…もっもう少(しこ)しだけなら…いてもいいですぜェ」


あああ…思ってることと言ってることが違う…ははは。


「にゃあ!」


嬉しいか〜そうか〜。


「にゃっにゃ!」


ん?猫が何かを指差してる。(多分)


「あ…」


倒しときゃ良かった…!
猫が指差した(多分)ものは神威と私がチューしてる写真。正確にはチューされてる写真。


「違うんでさァ…」


自分でも何が、と思うが恥ずかしい。とんでもなく恥ずかしい。
穴があったら入りたい。というか掘って入りたい。

写真立てを手に持ってみる。
今思うとこの写真を見られたのが猫じゃなくて、山崎とかだったらヤバかったな。


「にゃあ」


猫が何か言いたそうだけど、残念ながら私は猫語が分からない。
座って猫を抱き起こしてみる。
何も抵抗しないなぁ…大丈夫なのかねィ。この猫。


「…アンタ見てると神威に会いたくなるなぁ」


ちゃんと生きてんのかな…。あの戦闘バカが死ぬなんてないと思うけど、一ヶ月に一回会えるかどうかだし…。
そう考えると一年に十二回会えるかどうかなんだなぁ。


「にゃあ…」
「どうした?…そんなしゅんとして…」


やっぱりこの猫、神威に似てる…。私が落ち込んでいるとしゅんとするところとか。

…って!落ち込んでないし!そんなんじゃないし!

第一何であんな…


「戦闘バカで意地悪でエロくて手加減を知らない男…」


好きなんかじゃない………。


「にゃ…?」


首をコテンと傾げる猫。可愛い…!
やっぱり神威に似ているけど…可愛いから何でもいいや。


「私の恋人……みたいなもん、のこと」
「にゃ!」


自分でもよく分かんないけど、この神威に似ている猫に神威のことを話してみようかな、な気分になった。


「出逢いの場所は…どこだか忘れたけど、満月の日だったんでィ」


今思うと…神威と私の出逢いってすんごいロマンチックだったんだなァ。


「で、神威に話しかけられて私が職質して…職業海賊って言われて年齢内緒って言われて…」


わんぱく坊主かって思った。っていうか


「コイツ馬鹿なんじゃねェか…って」
「にゃっ!?」
「…なんでお前が驚くの」


あん時、神威と殺り合っていたら私どうなってたんだろ。殺されたかな…。


「…神威って、私のどこが好きなんだろ」


話しただけで初対面の人間を気に入るようなヤツだっけ。


「にゃにゃにゃにゃにゃ!にゃっ!にゃにゃ〜にゃ!」


何言ってんだろ。というかこれは言葉なのか。

…そういえば私って


「………なんで、神威のこと好きになったんだろ」
「にゃ!」


何だか猫が急に暴れだす。


「どうしたの?」
「にゃにゃ!」


この猫、何か伝えたいのかな。


「お腹空いたの?」
「にゃ〜あ!」


顔を横に振る猫。
…猫って人間の言葉分かんの?


「喉渇いたの?」
「にゃ〜あ!」
「眠いの?」
「にゃ〜あ!」


なんなんだ…どうすればいいんでィ。
さっきまでおとなしかったのに。
神威のどこ好きなんだろって言ったら急に暴れだして…。
あれ、もしかして。


「…神威との仲心配してくれてんの?」
「にゃにゃにゃ!」


おお!鳴き方が変わった!当たり?当たりなの!?


「にゃにゃにゃ〜にゃ」


そう言い?ながら何だか自慢するかの如く顔をキラキラさせる。
…この猫は一体なにを力説しているんだろ。


「大丈夫でィ」


猫の頭を撫でてみると、気持ち良さそうにする。可愛いなあ。


「…神威には…言ってやらないけど、」
「にゃ?」
「…神威のこと、いつも想ってるから」


私はきっと優しい表情をしているんだと思う。猫の顔が赤いような気がするけど猫も何だか微笑んでいるような気もしたから。

…自分で言っといて何だけど、結構いやかなり恥ずかしい。
…猫相手じゃないと言えん。




*・*・*・*・
この猫が神威なのかそうじゃないのかはご想像にお任せ致します。

梅ノ季節、小説大量更新期間!
第四段。




*20120324

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