拍手御礼文
□お揃い
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※昼
※いつ頃の話?と突っ込まないでください
「総羅」
馴染みの団子屋で昼寝中、これまた馴染みの声が聞こえてきてまたか、と思いながら返事をした。
「なに」
「趣味の悪いアイマスクだね」
いきなりなんだコイツ。失礼だろ。
お気に入りなのに。
でも言われ慣れるって恐ろしい。
買った当初はイライラしたけど、もう何も思わなくなっちゃったよ。
しかし何か言ってやりたい。
「趣味の悪い……………」
趣味の悪いなんちゃらかんちゃらって言ってやろうと思ったけど、考えるより先に声が出た。
考えてない…。
神威はなあに?と言ってくる。イラっ。
アイマスクを取りながら上体を起こして言った。
「髪型」
神威がビキッという効果音たてたような気がした。
さっき適当にみつあみが目についたから言ったんだけど、いや別に神威が趣味の悪い髪型してると思ったことはない。
趣味の悪い…まで言っちゃたし。
適当に髪型って言っちゃったけど…悪かったかな?
…言い返すなんて相当かわいくないしひねくれてる。
「じゃあ」
ピッと人差し指を立てて。
「総羅と同じ髪型にしようかな」
私が言い返したこととか気にしないっぽいけど、どうしたらその発想に行き着くんだ。
「…なに言ってんの」
訝しげに神威を見たらいつもの笑顔があった。
「総羅とお揃い」
嫌かと聞かれたら、なぜか嫌じゃない。…バカップルか!!
「……すれば」
「うん、だから結んで」
一体どこら辺がだから?なんだろう。
この髪型難しくないし自分で結べ!
「自分で出来るでしょ」
罪悪感はあるよ。神威もみつあみ気に入ってたんだろうし。多分。
「出来ないヨ」
嘘だろ。出来るだろ。みつあみのほうが難しい。
「ずっとこの趣味の悪い髪型してたんだもん」
…この場面で言ってくるんだ。
どうすりゃ良いの。
「……ごめん」
とりあえず謝った。
でも目ェ逸らしちゃった。気まずくはないけどなんか……アレで。
「なんだか今日は大人しいね」
今日はっていつも大人しいだろ。
私に背を向けてるけど、やれって言ってるのかな?
どうしよう。趣味の悪い髪型って言っちゃったし私が結えば満足するのか?
…するんだよね?
……じゃあ、…このゴム取っちゃっていいのかな?
…なんでもいいや。
案外髪の毛長いな。男なのに妙に似合ってるし。
…短髪も似合うだろうな。
ちょっと見てみたいかも。
…みつあみの痕ついてんだけど…どうすりゃ良いの?
「櫛とか持ってない?」
やっぱり櫛だよね。とかしてみたい…かも。
「持ってたら逆に嫌ダロ。引くでショ」
…うん。
「…そうかも」
準備万端!みたいな。
ボサボサ頭すぎるのも嫌だけど、神威くらいの跳ね具合が丁度良いかも。
近藤さんみたいに前髪が立ってるのが一番好きだけど。
まあ神威のだし手櫛でいいか。
…なんかすごいサラサラしてるんだけど…。
予想外すぎる。血とかついてるのかと思った。
ってかコイツが私と同じ髪型にすると女々しくなっちゃうんじゃ…。コイツ元々可愛い顔してるし。
ポニーテールの方が良いかな。でも若い頃の土方さんと同じになるな。
そういえば土方さんも長髪と短髪どっちも似合うな。
「どうしたの?」
あ、ポニーテール土方さんのこと考えてて手が止まってた。
本題忘れるとこだった。
「…私と同じ髪型にすると女々しくなりゃしやせんかィ?」
「別に良いよ」
良いの?マジでか。
相当女の子っぽく見えると思う。背も低いし。
あ、ポニーテール神威とか見てみたいな。
「…ポニーテールとかどうですかィ?」
「好きなの?それ」
「好きってェか、似合いそうだなって思ったんでさァ」
「じゃあそれで」
「へいへい」
何でも良いんですかねィ…?
まあともかく高い位置で真ん中に髪の毛を寄せないと。元服前の男の子になるな。きっと。
「ねえ、さっき何考えてたの」
神威が聞いてきた。
心なしか、いつもより声色が低い気がする。
「…ああ、土方さんが若い頃ポニーテールしてたなって思い出してやした」
私がそう言ったとき、掴んでた神威の髪の毛がスルッと抜け出した。あれ。
「なにそれ」
え…ちょ、なに。
あれ。何か機嫌悪い?
「何怒ってんでィ」
「ゴム返して」
なんだか無愛想だ。
右の手のひらを出されたからゴムを返すと、神威は無言でいつものみつあみに結び直している。
なんなんでィ。
「総羅うしろ、向いて」
そう言われて反射的にうしろを向いたら、締め付け感が無くなって髪の毛が肩に乗っかる。
「何やってんでィ」
「お揃い」
そう言って神威は私の髪の毛を優しく手でとかす。
きつく結んでたから痕とれないと思うけど…。
…何か恥ずかしい…。
神威は私の髪の毛で何かしてる。
「はい、出来たヨ」
そう言われて神威の方を振り返るといつもの笑顔。だけど妙に満足そうに見えるし声色も元に戻った。気のせいかもしれないけど。
自分の髪の毛を触ってみる。あれ。
「なんでみつあみ?」
「お揃い」
「…はあ」
私が微妙な返事をすると神威はさっきさ、と言った。
「俺と二人きりなのに他の男のこと考えたダロ」
他の男…?
「土方さんのことですかィ?」
「名前言わないでよ。俺のことは呼ばないくせに」
あれ。これは俗に言う嫉妬っていうやつなのかねィ。
…何で神威が?
ってか神威のこと名前で呼んでなかったんですねィ。気づかなかった。
…名前で呼ばれようが呼ばれないだろうが、どっちだっていいだろう。
…まあ減るもんじゃないし。
「神威」
言ってみる。
「……………なに」
あ、目ェ逸らした。
なにって言われても困る。
「呼んだだけでさァ」
あ、目ェ合った。
「……もう一回」
「神威…?」
何がしたいんだ。
「…なんだか熱が込み上げてくるヨ」
…なんでだ。どこから。
「総羅」
「…なに」
「呼んだだけ」
真っ正面から名前を呼ばれただけだけど、何か良い…かも。不覚にも少(しこ)しだけドキッてした。少(しこ)しね。
神威の笑顔がなんだかいつもと違うような気がする。
…なんか私たち端から見ればバカップルってやつなんじゃ…?
バカップル…と言うか恋仲に見られても別に良いかな、なんて思ったり……思わなかったり。
それからボサボサ頭の長身の男が来るまで神威と一緒いた。
…けど、あのおっさん神威に胸ぐら掴まれてたけど大丈夫かな。
*・*・*・*・
拍手御礼文というのも書いてみたかった!
*・*・*・*・
結構加筆修正しました。
ちなみに一番最初に。
途中間違えて電源ボタンを押してしまう、ということがありました。泣きそうでした。
*20111104
*20111120(加筆修正)