小噺

□学校が違うヒト
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※高校生
※総羅(→)(←)土方




私は今年で高校生になった。朝の電車は少し混んでいる。
私の前に立っている土方さんとは同じ中学校。一年生のころのクラスメイト。
二年生も三年生もクラスは違った。
けど乗る電車がいつも同じ。そして同じ車両。
土方さんは何故かこの車両のドアの前に並ばない。
ホームは混んでいるから分からないけれど、いつもどこからか乗ってきて態々先頭の車両、つまり私が乗っている車両まで来る。
人の視線なんて気にしない人なのかも。だって朝のこの時間帯、車両移動する人って立っている人からすれば邪魔だし。


「土方さん」
「なんだ」
「混んでますね」
「そうだな」
「あんたそのデカイ巾着、何が入ってんですかィ」
「防具」
「…弓道部?」
「いや剣道部だけど…なんで?」
「その長細いの」
「竹刀」
「ふぅん」


会話が途切れる。少し気まずい。
だって一年生のとき同じクラスだっただけで、特に親しい訳じゃないし。
名前の順も近くない。
席替えで一回だけ隣になったことがあったくらいで。

土方さんが降りる駅はあと二駅。もう少しで土方さんは降りる。


「そういえばさ、」
「ん」
「土方さんってどこの高校通ってんの?」
「…銀魂高校」
「へえ」
「沖田は?」
「真代女子」
「沖田頭良いもんな」


土方さんは防具が入っているというデカイ巾着を肩に掛けて、長細い筒を手に持つ。
お馴染みのアナウンスが流れる。
そろそろ着くみたい。
周りを見渡せば、土方さんと同じ校章を着けた学ランを着た生徒がドアの前に移動する。

土方さんもすぐ横のドアの前に移動する。

またお馴染みのアナウンスが流れると、空気を抜く音と共にドアが開く。

土方さんが降りる駅に着いた。


「じゃ」
「ん、じゃあね」


土方さんは先頭の車両からホームに降りる。
改札から一番遠いから一番歩く。
そしてドアが閉まる。


私が降りる駅ももうすぐ。
それまでにいつも通りの顔に戻っていますように。

「ん、じゃあね」そう言ったあと、「また明日」そう言っていたような気がした。




*・*・*・*・
久しぶりの土沖(・ω・)
電車好きです。




*20120509

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