short.

□あの子と仲良くなる方法
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『ブーッ!』


「きゃあっ!なにこれ!」



「あ、なまえちゃんオナラしたー」




あの子と仲良くなる方法
沖田くんの場合





「してないよっ!また沖田くんの仕業でしょー!」



恥ずかしかったのか赤くなった頬を少し膨らませて怒ってるのは、僕の好きな女の子。


席に座ろうとしたなまえちゃんの椅子の上に、そっとブーブークッションを置いたのはもちろん僕。

好きな女の子の後ろの席なんて、最高のポジションだと思わない?


前の席から配布物のプリントが回されてくる時なんか、チラッと目が合っちゃったりなんかして。


何の用もないのになまえちゃんの肩をポンポンと叩けば、素直ななまえちゃんはすぐに振り向いてくれる。


立ててた僕の指がほっぺに刺さった顔なんか最高に可愛かったよ。


あれ以来、振り向く時はちょっと警戒してるみたいだけど。


 
要するにこの席は、なまえちゃんに悪戯するには申し分ないってこと。



「なまえちゃん?」


僕が軽く肩を叩くけど、案の定返事をするだけで、振り返らないなまえちゃん。でもそれでいいんだ。


僕が黙ってれば、ほら、振り向いてくれる。



「ううん、なんでもない」


「そう?ならいいけど」



そのまま友達と教室を出ていったなまえちゃんの机には開かれたままのスケジュール帳。


少し手を伸ばせば、それを手にするのは簡単で。何枚かページをめくったそこに、僕はある予定を書き加えておいた。


そっと元に戻しておけば、足早に戻ってきたなまえちゃん。間違いなく怒ってる様子のなまえちゃんだけど、ちっとも怖くないよ。こうなることは想定の内、だしね。



「沖田くんっ!」


「なに?なまえちゃん」


「なに、じゃないよっ!なにコレ!私が120円ってどーゆーことっ!?」



そう言って突き出してるなまえちゃんの指先には1枚の値札。さっき肩を叩いた時に僕が貼ったものだけど。


 
「確かに120円じゃ安すぎだよね、ごめん」


「もうっ!値段の問題じゃ、」


「わかってるよ、なまえちゃんが可愛くて、つい」



そう言って笑顔を見せれば、ふいっと顔を逸らされちゃったけど。


席に座ったなまえちゃんはスケジュール帳を鞄に仕舞ってる様子。僕の悪戯には、どうやらまだ気づいてないみたい。



「きゃあーっ!」


「なまえちゃん、どうした?」



なまえちゃんが、あんまり大きい声だすからクラス中の視線が僕らに集まった。まあ、僕のせいなんだけど。


涙目になりながら振り向いたなまえちゃんが差し出してきたのはペンケース。桜模様のそれはなまえちゃんらしくて可愛いけど、なまえちゃんが言いたいのはそこじゃないことを僕は知っている。開いたチャックから覗いてるのは蛙のおもちゃ。それもちょっとリアルなやつ。



「ごめん、ちょっとやりすぎたかな?」


「沖田くんなんか、もう知らないっ!」



なまえちゃんは、そう言ったっきり前を向いてしまった。呼び掛けても、もちろん返事はない。

 
僕的にはゴキ〇リにしなかっただけ、配慮したつもりだったんだけど、どうやらそうゆう問題じゃないみたい。


確かに今日はちょっと意地悪しすぎたかな。


だって、今日は終業式なんだもん。明日から夏休みになっちゃうから、しばらくなまえちゃんには会えない。


それが寂しくていっぱい意地悪したくなっちゃったんだけど、結果はなまえちゃんを怒らせちゃっただけで。


結局そのまま夏休みに突入。気分は最悪。




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