short.

□嘘つきアレルギー
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「へっくゅん!」


「一君、風邪?」


「なまえ、いい加減にしろ」


「え、なんのことかなー?」


「先程、嘘をついただろう」





幼なじみの一君はちょっと変わったアレルギーの持ち主。なんでも、私がついた嘘に反応してくしゃみが出るらしい。噂をされるとくしゃみが出るってのは聞いたことあるけど…それが百発百中で嘘を見抜くもんだから、私にとってはとんだ嘘発見器だ。



「一君はさ、沖田先輩ともよく一緒にいるけどその時はくしゃみしてないよね」


「総司のは嘘ではなく、タチの悪い冗談だからな」



それにあんたの嘘にしか反応しない、ということらしい。




「一君は風紀委員ではない」


「へっくゅん!」


「一君は剣道部ではない」


「…へ、へっくし!」


「一君は、…ぐへっ!」


「…なまえ、いい加減にっ」


「ぐっ!苦し、苦ひーよっ!一君んっ…」


「その口、二度と嘘がつけぬよう縫い合わせてやろうか」


「ごめんなさい、許してください!あ、沖田先輩だ!うん、いつ見てもイケメンだなあ」


「…」


 
あれ、一君がくしゃみしない。ということは私は嘘ついてないってこと。まあ、沖田先輩がカッコいいのは紛れもない事実だ。



「一君になまえちゃん、なにしてるの?」


「沖田先輩、いいところにっ!私が面白いもの、見せてあげます!」



私が、えへん!と胸を張ってそう言えば、興味を示した様子の沖田先輩は爽やかな笑顔で、へえ、なにしてくれるの?と腕組みしている。とてもカッコいい。



察しのいい一君は私の考えなどお見通しなのだろうか、ただならぬ無言の圧力と殺気に負けそうになるけど、沖田先輩の後ろに避難してそっと耳打ちをした。


それを聞いた沖田先輩が怪訝な表情でちらりと一君を見やったのを見計らって、私は一言、



「昨日のテスト100点だったんだあ!」



「ぐ…ぅ、へっくゅん!」



一瞬くしゃみを堪えた様子の一君は涙目になってて少し可愛いけど、それよりも滲み出る殺気のオーラに思わず沖田先輩のカーデの裾を掴ませてもらった。



「僕、なまえちゃんが好きなんだ」


「…」


「…え?」


「ほんとだ、僕の嘘じゃ反応しないねー」



 
あ、はは…そうだよね、嘘だよね。なに一瞬期待してんだよ、私の馬鹿!自意識過剰!思い上がるな!



「…はぁ」


「なまえちゃんに頼みがあるんだけど、」


「な、なんでしょうかっ!」



沖田先輩の頼みなら喜んで!と言ってしまった私を恨んでも、もう遅い。沖田先輩に耳許で囁かれてドキドキした自分をぶん殴ってやりたい。



「あの、どうしても言わなくちゃダメですか?」


「うん、どうしても」



沖田先輩、ここでその笑顔はズルいです。




「わかりました…私、言いますっ!」



ああ、くしゃみの神様…いらっしゃるなら、どうか私にご加護を…




「は、一君っ!」



「っ…!なんだ」



案の定、手を口に宛ててくしゃみに備えている一君。




「私…一君のことが、好きっ!」



「…っ!」




くしゃみくしゃみくしゃみー!くしゃみしろってー!



「…なまえ、」


「ぅ…」


「さっきの言葉、嘘ではないな?」


「…っ!一君なんか嫌いっ!嫌い嫌い!きらー…」



「なまえ!や、やめ…へっくゅん!へっく、へっ…」



 
「一君なんか、だーいッ嫌いなんだからあーっ!」



「へ、へぇえーくょんっ!」






沖「なんか、微妙に苛々するんだけど」





おしまい!

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