short.

□心転身-しんてんしん-
1ページ/2ページ




「土方せんせぇー!っ大変です!沖田先輩と斎藤先輩がっ!」




心転身-しんてんしん-
沖×斎の場合






道場の真ん中で二人が倒れたのは30分程前のこと。



マネージャーのなまえに呼び出され駆けつけた剣道部顧問の土方が二人の面を取ると、尋常ではない汗。



胴着も脱がせて、今は風通しの良いところで寝かせている。



その横でうちわを扇いでいるなまえ。



意識は朦朧としているものの、二人共自力で水分を摂れた。



「こんなクソ暑い中、胴着なんか着てたら熱中症にもなる訳だ」



今年の夏の暑さは去年のそれとは比べものにならない。



「あの、私新しい氷貰ってきますね!」



二人に宛がっていた氷は、暑さのせいか二人の熱のせいか、溶けて袋の中で水になっていた。


「ああ、頼む」



なまえが職員室に氷を貰いに行ってすぐ、二人は目を覚ました。


 
「あ、れ?僕…」



「っ…く、」



「覚えてねぇのか。お前達が打ち合ってたらいきなり倒れたってみょうじが呼びに来て…」



「ああ、そうだった。急にクラーっときて、」



「目の前が暗くなった。」



「「…ん?」」



「土方さん、僕まだ夢の中みたいです」



「俺もそのようだ」



「なに言ってやがる!おいっ!寝るなっ!」



「だって、僕がもう1人いるなんておかしいでしょう?」



「悪い夢だ、目の前にいる俺が総司のような口をきいている」


「斎藤、熱中症で頭ヤラれちまったのか?」



「僕は沖田ですよ」



「はあ?どう見ても斎藤だろうが」



「土方先生、俺はここに」



「てめぇは総司だろーがっ!」



「だから僕はこっちですってー」



「お前らちょっと来い」





〜道場にある大きな鏡の前にて〜



「あれ、僕がはじめ君になってる」



「そんな、馬鹿な…俺が、総司に…」



「なにブツプツ言ってんだよお前ら」



「土方さん、僕はじめ君になっちゃいました」



「はあ!?お前総司かっ?どう見ても斎藤だが…」


 
「ちょ!はじめ君っ!僕の身体で勝手に自殺しないでっ!」



「じゃあ…あれが斎藤、なのか?」



「土方さーんっ!はじめ君を止めてー!」



「もう訳がわからんっ!おいっ斎藤、落ち着けっ!」



「はっ…!土方先生…とんだご迷惑を、」



「おい斎藤…それ以上喋るな」


「な、俺になにか不手際でも…」



「総司の顔で斎藤だと怖いんだよ」



「僕こっちですよー」



「うるせぇ!これ以上混乱させんな!」



「土方さん、血圧上がりますよ?」



「総司っ!黙ってろ!」



「僕、斎藤ですー」



「っ…!もういい。とりあえず、戻るまで周りに気づかれないようにしろ、」



「あ、お二人とも目が覚めたんですねっ!よかったあ!」



「「「…よかった、のか?」」」







―――次の日。



「なんでこんな早く迎えに来るのさあ…」



「俺には風紀委員の仕事がある。しかし今はお前が俺だ。お前にやってもらわねば困る」



「はいはいわかったよーでも、はじめ君に僕のフリが務まるかなあ?」



「俺の心配はいらない。お前の方がよっぽど…」


 
「僕なら大丈夫だよ。君のフリなら石田散薬持って"なにゆえ"って言ってればどうにかなるし」



「な、何故っ…!」



「ほらね」



「っ…く!とにかくっ!風紀委員の仕事を…」



「わかってるって!あ、平助となまえちゃんだ!」



「おはよー総司!風紀委員の手伝いかっ?珍しいことも…」



「おはようございます、沖田先輩、斎藤先輩!」



「みょうじ、平助、遅刻だ」



「沖田先輩…?」



「えーなまえちゃんはギリセーフでしょ!平助は遅刻っと、」



「なんでだよーはじめ君っ!依怙贔屓なんか風紀委員としてダメだろっ!」



「そうだぞ、ちゃんと仕事をしろ」



「お前…ほんとに総司か…?熱でもあるんじゃねぇの?」









 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ