short.

□家庭教師
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"コンコン"

見慣れた扉をノックする

「なまえ?入るよー」


「あ、総司?どうぞー」


家庭教師



「あー寒い。」


僕は沖田総司

大学1年生

で、こっちは幼なじみで高3のなまえ



冬休み、もうすぐ受験のなまえの勉強を見てやることになった

家庭教師…みたいな?



「総司、座っていいよ」



なまえは僕と同じ薄桜大学に受かるべく、一生懸命机に向かっている。

その背中を見ながらベッドに腰をおろした。



「わかんないとこあったら呼ぶから」


「ああ、うん」


(ひまだなー。大体、なまえの頭ならそんなに勉強しなくても受かると思うけど)


そう思いながら携帯をいじる

最近ハマっているゲームを起動

『ピッ、ピピッ、ピッ…チャ〜ラ〜ラ、チャララン♪』



「…ちょっと、総司!」


「ん?なに、質問?」


「ちがーうっ!なにその音!?集中できない!」


「え?ああ、ごめん」
 

しょうがないからサイレントモードにする。


静かな部屋に聞こえるのはなまえが文字を書いている音と、ページをめくる音…と僕が携帯をいじる音だけ。


「ちょっと総司!」


「ん、なに?僕静かにしてたよ?」


「…そうじゃなくて、質問!」


「んーどれどれ…」


「…。」

「………。」


「総司?」


「あーもしもし、はじめくん?ちょっと質問があるんだけど…」


――――数分後。


「…あーなるほどね。わかった、ありがとう。じゃあねー」ブチッ


「なまえ、こんな簡単な問題わからないの?これじゃ薄桜大学、無理かもよー?」


「…総司だってわからなかったじゃん!」


「え、なに?何か言ったかな?」


「…言ってません。」


「そんなことよりさあ…」


「そんなこと?」

怪訝な顔をするなまえを無視して話を続ける。


「受かったらさ、ご褒美あげようか?」


「ご褒美?」


「うん、頑張ったご褒美。…やっぱやめた」


「え?なんで!?」


「僕、タダで勉強教えてるんだし、お礼してもらわなくちゃ」


「さっきはじめくんに…」

「なにか?」

「いえ、なにも」
 
 
「で、お礼って?」



「チューして」


「ぇえっ!?」


「そしたらご褒美に付き合ってあげる」


なまえは顔を真っ赤にして口をパクパクさせてる。金魚みたい。


そして「勉強する!」と言って机に向かってしまった。



「そんなに意気込んじゃって…どうしてもご褒美が欲しいの?それともお礼がしたいのかな」


なまえの手がピタリと止まる。


なにも言わないなまえを後ろからからそっと抱きしめ、その手からシャープペンを引き抜く。


そしてノートに"すきだよ"と書いて見せる。


「なまえ?」と顔を覗きこんだら、僕の手からシャープペンを取り"私もすき"と書いた。


それを見た僕が少し顔を近づけたら、全力で拒否られた


「なんで拒否るのさ」


「まだ受かってないもーん」


「あはは、確かに!じゃあ頑張ってね!」


「言われなくてもやりますー」


再び勉強を始めたなまえの背中をベッドに腰掛けて見つめる。


その背中に「なまえ、好きだよ」と声を掛ければ、シャープペンを落とす音が聞こえて、僕は思わず口元を緩めた。





 

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