story.

□D
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「はじめ、」



「……」



「黙るの、よくないよ」



「ああ、わかってる」



「どうして1人で来たの?」



「あいつに呼ばれたんだ」



「あいつってさっきのケルベロス?」



「ああ、今まで何回か声を聞いていたが俺も会ったのは今日が初めてだ。相手がケルベロスだと知ったのも先程のこと、」



「だからってなんで1人で…!」



「すまない。なまえが来てくれなかったら今の俺はなかった。だが、お前を危険に巻き込みたくなかった。結果的には、巻き込んでしまったが…」



「うん、いいよ。わかってくれるなら。こうして無事だったんだし。で、どうしてケルベロスははじめを呼んだの?」



「、それは…」



「それは…?」



「俺が、」



一瞬、なにを言われたのか解らなかった。だって、信じられる?ううん、まだ信じられないよ。



はじめが、悪魔だなんて。



私は信じないよ。



「は、冗談でしょ…?」



「冗談ではない。その証拠に、先程なまえが唱えた降魔経文に俺の身体が反応した」


 
確かに私が2回目の詠唱を始めたタイミングではじめは苦しみ始めた。


でも、そのすぐ前にも私は降魔経文を唱えたし、今までに何回もはじめの前で詠唱はしている。


それに、私達は双子だ。もし仮にはじめが悪魔なのだとしたら、私だって悪魔のはずだ。



「なまえの言いたいことは分かる。俺もあいつに初めて自分が悪魔だと聞かされた時は、嘘だと思った。しかし、それが本当なら悪魔の声が聞こえることも傷が治るのが早いのも合点がいく」



「そうかもしれないけど…でも!」



「俺達だけで話していてもなにも解決しない。きっと、父さん達が何か知っているはずだ」






ケルベロスがはじめを迎えに来た。



魔界の王の後継者として。



断れば家族や友人に危害を加える、と。



それでもはじめは魔界に行く気はなかった。



自分が悪魔だと認めなかった。



だから無謀にも1人で戦いに行った。



「母さん…」



私達は帰るなり、母さんに問い詰めた。父さんはいなかったけど、悠長に帰りなんか待っていられなかった。



「ごめんねはじめ、そしてなまえ。全部母さんが悪いの。」


 
「どういうこと?」



「あなた達には、きちんと話さなくちゃね」



そう言って連れてこられたのは、先日私が調べものをしていた倉庫。一番奥の本棚の前で止まった母さんがその横の壁に魔法陣を描くと、扉が現れた。



どうやら魔法陣がその扉の鍵になっていたらしい。



初めて見るその扉の中に招き入れられると、3畳程の薄暗い小さな部屋に小さな机が1つあった。その上に置かれた小さな箱からは紫色の霧のようなモヤモヤとしたものが不気味に光を発しながら溢れ出ていた。



「ああやっぱり、もうこれでは抑えられないのね…」



「母さん、これは…」



「これは、パンドラの箱よ。はじめが生まれた時、ここにはじめの持つ悪魔の力を封印したの」



「じゃあ、はじめは…」



「…そう、はじめは、はじめの父親は悪魔なの」



「じゃあ私は?私も悪魔なの?私達は双子なんでしょう!?」



「あなた達は正真正銘、私のお腹に授かった双子。でも、なまえの父親は父さんよ」



「よく、わからないよ…」


 
「あなた達は、異父重複受精で生まれた双子なの。黙っていて、ごめんなさい。母さんは、はじめもなまえも同じ人間の子供として育てたかった。でも、隠し事はいけないわよね。父さんには私から…」



「…知っていたよ」



「父さんっ!?」



「これでも、最上級祓魔師を任せられているからね。最初から知っていたさ。ただ、母さんが望むならその意思を尊重したかったんだ」



「あなた…ごめんなさい。私…」



「いいんだよ。父さんにとっても、はじめもなまえも変わらない大切な子供達だ」



「ねえ、はじめはこれからどうなるの?」



「パンドラの箱で封印していた力が成長に連れて抑えきれなくなっている。はじめの身体に異変が起きはじめているのは、そのせいだ。そしてこのままでは、はじめは完全に人間では居られなくなってしまう」



「そんな…なにか、なにか方法はないのっ!?」



「父さんも母さんもはじめを助けてやりたい。しかしここまで戻ってしまった力を封印するのは、悪魔を祓うことと同じ。はじめの命も奪うことになってしまう」



父さんは自分の無力さを謝っていた。母さんは、泣いていた。



はじめは黙って聞いていた。



私は…私はどうすればいい?




 

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