story.

□C
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日曜日の朝、総司との待ち合わせの時間が迫る中、私はこっそり玄関に向かう。はじめに見つかればまた付いてくるに違いない。



廊下の角の壁から玄関の様子を伺うとそこには…はじめがいた。



やばっ見つかる!咄嗟に隠れたけど、聞こえたのはガチャ、という玄関が開く音。



バタンと閉まる音を確認してから玄関を覗いてみると、そこにはじめはいなかった。




「…もしもし、総司?…ごめんね、今日急用が入っちゃって…うん、また今度、」



なにか嫌な予感がする。



さっきはじめが肩に提げていたのは、革製の居合刀のケースだった。



でも、あの中身が居合刀じゃないことは知っている。



普段持ち歩いてる柄の部分だけの剣ではない、しっかり刃の部分まで付いた降魔剣が入っているはずだ。



あれは任務の時にしか持ち出さないのに…



私は急いで部屋に戻るとホルスターを着けて腰の両脇に銃をつっこんだ。



銃が見えないようにロングコートを羽織って窓の外を確認すれば、歩いているはじめが確認できた。



どこに行くのかはわからない。


 
でも、そこはきっと安全な場所じゃないと思った。







はじめの後ろを尾行してたどり着いたのは、心霊スポットと名高い廃校だった。



噂されている心霊現象は、ほとんどが悪魔の仕業だろう。



中に入れば、そこは空気は澱んでいて下級悪魔の巣窟と化していた。



なにか任務でも入ったのか、でも私に声をかけないのはおかしい。



いつも必ず二人で戦っているのだから。



はじめが入っていったのは体育館だった。微かに開いたままの扉から中の様子を伺う。



暗幕が閉まっているのか、薄暗くてよく見えないけれど、小さくはじめの声がした。



「何の用だ」



一瞬バレたのかと思ったけど、違うみたい。はじめは誰かと会話をしているようだった。



でも、私にははじめの声しか聞こえない…ということは、はじめは悪魔と会話しているのだろうか。



「俺には関係ないと言っているっ…!」



はじめが声を荒げたかと思ったら、体育館の中に光が浮かびあがった。



私はすぐにはじめが剣を抜いたのだとわかった。



慌てて扉を押し開けて中に入れば、はじめと対峙している相手が目に入った。


 
三つ首に竜の尾、蛇の鬣(たてがみ)を纏った巨大な獅子の姿。聞いたことしかないけど、きっと間違いない。こいつは魔界の番犬…



「…ケルベロス!」



「、なまえっ!?」



はじめはなんとか攻撃を受け止めているけど、かなり押されている。こんな大物は任務で任されたこともなかった。



私も応戦しようと銃に手をかけたけど、ケルベロスに触発された下級悪魔達が集まって凶暴化しているのに気づいた。



「なまえ、詠唱を頼むっ」



確かにこの悪魔の数だと、銃よりも一気に倒せる詠唱が有効だ。



私は右手でロザリオの十字架部分を握って詠唱を始める。左手には銃を構えて襲いかかる悪魔に撃ち込む。



詠唱を始めれば悪魔の動きは鈍くなる。それでも詠唱をやめさせようと私に襲いかかってくる。



ケルベロスにも詠唱は効いているようだけど、きっと1回唱えるだけじゃ足りない。



群がる下級悪魔が一段落ついたところで、私はケルベロスの左の首の額の真ん中に銃弾を撃ち込んだ。



銃弾の中には濃度の高い聖水が仕込まれている。的確に急所に撃ち込めばいくらケルベロスでも致命傷になるはずだ。


 
案の定左の首はもう使い物にならないらしく、項垂れているが、まだ首は二つ残っている。



逆上したケルベロスが襲いかかろうと尾を高くあげて今にも飛び掛からんばかりに構える。



私はすかさず詠唱を始めた。これで動きは鈍くなるはずだ。



「ぐっ…ぅ、」



「はじめっ!?」



途端に隣で苦しみ出すはじめ。外傷は見られない。胸の辺りをきつく握っている。倒れ込んだはじめに気をとられて詠唱が途切れてしまった。



座り込む私達にケルベロスが襲いかかる。



左手に持っていた銃で真ん中の首の額を狙って素早く4発撃ち込んだところで真ん中に命中した。その間に右手も銃を構えようと腰に手を伸ばすけど、やばい、間に合わない。



残った右の首が大きく口を開けて頭上に迫る。食い殺される…!と思わず目を瞑ったけれど、いつまで経っても想像していた痛みは感じなかった。



恐る恐る目を開ければ、半身だけ起こしているはじめが振り上げた刀がケルベロスの額の真ん中に突き刺さっていた。



「た、助かったぁ…」



シュウゥゥ…と水が蒸発するような音と共にケルベロスの姿は消えていった。



 

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