story.

□ももたろう
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都会とはかけ離れた、田舎町。
そこに新婚カップルの斎藤一となまえは住んでいました。

はじめくんは会社勤め、なまえは慣れない家事をこなしながら留守番をしていました。

今日もはじめくんは、仕事に出掛けていきました。

なまえは近くのスーパーに買い物に行きました。

その帰り道、家へと続く土手を歩いていると、川上のほうから大きな桃がドンブラコドンブラコと流れてくるではありませんか。

「え、なに?私夢でも見てるのかな?」

両手で頬をペチッと叩いてみましたが、しっかり痛かったのでどうやら夢ではないようです。

「と、とりあえず、家に持ちかえらないと!」

おかしな義務感を抱いたなまえは、大きな桃を抱えて急いで家に帰りました。

なまえは夕飯の支度をして、さてどうしたものか、と桃を眺めていました。

すると―――パックリ!

不思議なことに、桃はひとりでに割れて、中からはすやすやと眠った男の赤ちゃんが現れました。

なまえが慌てふためいていると、そこへはじめくんが帰ってきました。

「…ただいま。」

「あ、は、はじめくん?お帰りなさいっ…」

はじめくんがなまえの様子がおかしいのに気付き、腕の中を覗きこむと…

そこには赤ちゃんがスヤスヤと眠っているではありませんか。

「なまえ…これはどういうことだ?お前、いつのまに…」

「いやいや違うから!はじめくん、激しく勘違いしてるよ!」

怪訝な表情をするはじめくん。

「アレ…アレからこの子が出てきたの。」

なまえが指差した先にあったのは2つに割れた大きな桃で、はじめくんは有名な"あの昔話"を思い出しました。

「しかし…まさか」

「そ、そうだよね。私もまさかとは思っていたんだけど、本当に男の子が…」

なまえが困った笑顔を浮かべ「どうしよう」ともらすと、はじめくんは

「とりあえず警察に届けなくては…」

と言いました。

赤ちゃんを見ると、さっきまで眠っていたのに目をぱっちりと開けていて、はじめくんと目が合うと「べーっ!」と舌を出してなまえに抱きつきました。

「か、可愛いー!…はじめくん、桃から出てきたんだから探しても親は見つからないよ!やっぱり私たちが育てるべきだよ!」

なまえが言い出したら聞かないのを知っているはじめくんは、仕方なく育てることを許してくれました。

「じゃあ、お名前つけてあげないとね!やっぱり桃から生まれたから、もも…」

「"ももたろう"なんて絶対いやだからね?」

「…へ?」

全く予想してなかったところから返事がして、その声の主を見ると、赤ちゃんがにこーっと笑っていました。

「…君、話せるの?」

「うん、ぼく、そうじ!」






桃から生まれた総司くんは、なまえが作ってくれるご飯をたくさん食べて、みるみるうちに大きく育ちました。

半年もすれば身長ははじめくんよりも高くなり、立派な青年になりました。

総司くんは、はじめくんに全くなつかず「なまえ、なまえ」といつもくっついてました。

赤ちゃんのころはそれが許せていたはじめくんも、今となっては自分と変わらないくらい"男"になった総司くんに、ヤキモチを妬いていました。




奇妙な3人暮らしが続いていたある日、なまえは落ち込んでいました。

親友の千鶴に最近出来た彼氏の土方という男が、千鶴を独り占めしてしまい全く会えなくなってしまったのです。

元気のないなまえを心配した総司くんはその話を聞くと、

「僕に任せて!」

と、おやつの金平糖を持って出かけていきました。





土方さんの家を目指して歩いていると、

「あれ?総司じゃん。なにしてんの?あ、それ金平糖?ちょっとくれよ!」

と藤堂平助が声をかけてきましたが、総司くんは「いやだ。」と言って先を急ぎました。

しばらくすると、

「お!総司じゃねえか!こんなところでなにやって…」

と話しかけてきた永倉新八を無視して、総司くんは歩き続けました。

またしばらくすると、

「おーい、総司!ちょうどいいところに来た!実は今日、合コンなんだけど人数合わなくてさあ…」

と原田佐之助が声をかけてきましたが、総司くんは「あっち行ってよ。」と笑顔で睨み付けました。



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