Sweetest Lie
□さようなら、幸せな日々
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昨日、僕はなまえちゃんに嘘をついた。
仕事に行くフリをした僕が向かったのは、何度となく通っているこの病院。
いつも通り定期検診だと思っていたのに、詳しく診るとかで検査入院になってしまった。
とりあえず今朝までに出た結果だけ聞いたけど、やっぱり僕の心臓は治ってなかった。まあ、わかってたことだけど。
それに、外からは見えないところで少しずつ悪化しているらしい。
いつ体調を崩しても、おかしくないって。
ほんと、土方さんたら大げさなんだから。
僕に余命を宣告したのも彼だった。
「土方さんの診断は、宛にならないんですよ」
本当は、わかってた。でも信じたくなかっただけなんだ。幸せを手放したくなかっただけなんだ。
だから気づかないフリをしていた。最近、前にも増して疲れやすくなっていたこと。なまえちゃをにキスをすると、早くなる鼓動に心臓が悲鳴をあげていたこと。
それ以上の行為は、僕の身体が持たないということも。
すぐにでも入院をしろと言う土方さんに適当に言い訳をして病院を出た。
入院の準備してきます、なんて嘘。
病院を出たところでケータイの電波オフモードを解除した。
「あ、今日休みだよね?ちょっと僕ん家来て欲しいんだけど。うん、1時間後くらいに」
1日振りに家に帰れば、なまえちゃんはソファーで丸まって寝ていた。
そっと、ベッドに寝かせてやる。
本当はこのまま、壊れるくらいに強く抱きしめて、僕だけのものにしてしまいたい。
彼女を連れて、どこか遠くに行ってしまいたい。
だけど、そんなことを考えるだけでも軽く動悸がする僕の身体が恨めしい。
どんなに遠くに行ったって、この運命から逃げることなんてできないんだ。
ごめんね、なまえちゃん。
自分の気持ちから逃げることしかできない僕を、許してくれなくてもいいよ。忘れなくてもいいよ。
だからせめて、嫌いになってください。