喫茶∫Rest:Calmly∫
□∫Épice∫
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Today's Menu ∫Dépression∫
Today's Music ∫First Snow∫
激しい雨が降り、屋根にぶつかる雨の音が重苦しく鳴り響き、
店内を流れる音楽の音色は、対照的に弾んでいた。
今日も雨は止むことなく、降り続けている。
―マスター、今日は何かオススメのティーをよろしく頼むよ―
―おや、今日はコーヒーではないのですね―
―何となく、だね。今日はそんな気分なんだよ―
―わかりました、そうですね・・・では―
そういって私は、茶葉を水で煮出し、ミルクを入れてさらに沸かした。
店内はティーの良い香りで、上品に包まれていた。
―そういえば、貴方はご存知ですか―
―何がだい―
―コーヒーは英語でもコーヒーですね―
―コーヒーだからね―
―しかし、紅茶はティーではなく、ブラック・ティーなのですよ―
―それは知らなかったな―
―少し、皮肉めいた話だとは思いませんか―
―ちょっとしたスパイスには丁度良い話だよ―
そうしている間にも、マスターは茶葉を濾別し終え、
シナモンや胡椒の他に、カルモダン、クローブを加えた。
―スパイス・ティーです。お待たせいたしました―
―お好みでジンジャーを入れてお飲みください―
男は少量を口に含み、風味を味わった。
スパイスがミルクと程よく合わさり、絶妙なバランスを保っていた。
―これは、美味しいな―
―今度からも、ティーを飲まれてはいかがですか―
―マスターはその日の気まぐれで出すから、良くわからないティーは怖いな―
―それは貴方が私に任せるからですよ―
―そうだな・・・これは一般的にチャイといわれるものか―
―特に厳密に区別はされていませんが、私のオリジナルスパイス・ティーです―
―ジンジャーを入れて飲むのも、悪くないな―
―ジンゲロール・ショウガオール・ジンゲロンの働きで、身体も温まります―
―よくわからないが、マスターが博識なのはわかったよ―
―血行もよくなりますよ―
―そいつは重畳。そろそろ行くとするよ―
―そうですか。では―
―いつでも、お越しくださる日をお待ちしております。迷えるアンヴィジター。
生きる為にはスパイスは欠かせません
雨音が重く響く今宵、あなたに幸福が訪れん事を―