喫茶∫Rest:Calmly∫

□∫Dépression∫
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Today's Menu ∫Dépression∫
Today's Music ∫First Snow∫

しとしとと、静かに雨が屋根に落ちる音がする。
店内に聴こえる、静かなピアノの音が心を落ち着かせる。
今日も雨は止まず、絶えず振りつづけている。

―こうも毎日毎日、雨ばかりだと憂鬱になるわね―
―何を仰いますやら。ずっと雨でした。ずっと雨ですよ―

―どうしてここの雨は止まないのかしら―
―だからこそ、ピアノの音が美しいのですよ―

―相変わらず話がかみ合わないわね、マスター―
―メランコリックな気分、という奴ですか―

レスト・カルムリィには、私と。
プラチナブロンドの、綺麗なウェーブがかかった女性。
この女性は、レスト・カルムリィの常連の一人。
お互いに、お互いの事を詮索しない事が、この喫茶店での暗黙の了解。
そのため、お互いの名前さえも知らない。

―マスター、曲を変えてもいいかしら?―
―今日はこの曲の気分です故に―

―どうしても感傷的になってしまうのよ―
―感傷的な気分にひたってください―

―それじゃあ気が滅入ってしまうわ―
―メランコリックな気分、という奴ですか―

彼女は私の言葉では満足できないようだった。
彼女は私に対して―暖簾に腕押しよね―といい、、
それ以上は何も言わなかった。

―そろそろ行こうかしらね―
―そうですか―

そして女性が席を立ち、店内を出ようとする。

―いつでも、お越しくださる日をお待ちしております。迷えるアンヴィジター。
 またいつか、合い間見える日まで。
 雨音が静かに木霊する今宵、あなたに幸福が訪れん事を―


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