りりぃのお部屋

□手から青い汁を出すネクストがあらわれた?!
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「今日はいいお天気ですね」
その日、朝から書類の山に埋もれていたバーナビーは、昼休み、会社近くの馴染みのカフェで二人分の軽食を注文していた。
アポロンメディアの目の前のその店は、虎徹の好きなハンバーガーがあって他にも簡単な軽食があって、料理はどれもなかなか美味しい。そのため虎徹とバーナビーだけではなく、アポロンメディアの多くの人がよく利用する店だった。
そこで、馴染みの店員と笑顔で挨拶を交わしたバーナビーは、テイクアウトで虎徹用にハンバーガーと自分用にベーグルサンドを買って行った。
最近の事件資料を広げ、朝からびっしり調べ物だったバーナビーに、虎徹が昼食を買ってきてやると立ちあがったのが昼休み10分前。だが、当の虎徹は提出日がとっくに過ぎた始末書に埋もれていて全く作業が進んでいない。
それもあるし、バーナビーも気分転換をしたいと思っていたので、虎徹の申し出を丁寧に断ったバーナビーは代わり自分が行くと提案した。
「虎徹さんは下のラウンジでコーヒーをお願いできませんか」
とはいえ、机に貼り付けたままでは気の毒だとバーナビーがそう提案すると、ぴょんと嬉しそうに飛び上がった虎徹は
「俺、バーガーな、マヨ大目」
と言い置いて一目散に駆けて行った。
元々書類仕事の苦手な虎徹だ、相当煮詰まっていたのかもしれない。
甘やかすようではあるが、昼食をとったら少し手伝おうと考えながら、バーナビーは出来あがった二人分の食事の入った袋を受け取った。
そのまま、目の前のアポロンメディアにまっすぐ向かって歩き出した時、視界の端に何かが飛び込んできた。
「きゃっ」
「っと、お怪我はありませんか」
それは、この時間帯ならどこにでもいそうな、いかにも会社のお昼休みにランチに出て来ました風の女性。
余程急いでいたのか、その女性はバーナビーの胸に半分転ぶように飛び込んできた。咄嗟に腕をあげて昼食の入った紙袋を守りつつ反対の腕でその女性を抱きとめたバーナビーは、そんな状況でも紳士らしく振る舞う。
「あっすみませっ…あ……」
抱きとめられた女性は、慌てて体制を立て直すと助けてくれた男を見上げ…驚いた顔をして頬を赤らめた。自分を助けてくれたのが、ヒーローのバーナビーだということを認識したのだろう。
そういった反応にはもう慣れっこのバーナビーは、最大級のハンサムスマイルを繰り出してみせる。
「気をつけて…」
そう言いかけた時だ、腕の中の女性がぽぅっと一瞬青く光ったのをバーナビーは見逃さなかった。
「あっ」
だがそれは一瞬で、女性は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてバーナビーの腕から逃れると、一目散に駆けて行ってしまった。
「あの、ちょっと」
後を追いかけようとしたが既に女性は道を渡っていて、向こうの方から「ごめんなさいっ」と叫ぶ声がわずかに聞こえた。
瞬きをするほどの間のこと。
雑踏に消えて行く女性の後ろ姿を見つめながら、バーナビーは躊躇した。
果たして本当にあれはネクストが能力を使った時の光だったのか、彼女はネクストだったのか。
ネクストだったとして、他人に影響を与えることができる能力があることをマーベリックによって嫌というほど知っている今となっては、接触してしまったことを警戒しなければいけない。
だが、一方でそういった能力者には滅多に出会わないことも知っている。
あとを追って能力を確認するほどのものだろうか。
考えた末、バーナビーは一通り自分の身の回りを確認し物理的な影響が特に見られないことを確認すると、ひとまずアポロンメディアに戻ってから考えようと歩を踏み出した。
この時はまだ、この判断が後に苦労をもたらすことなど勿論知る由もない。
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