りりぃのお部屋

□罠
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最近、ナマイキな割にどこかかわいい相棒が、なんだかちょっとおかしいなと虎徹は思っていた。

賠償金の問題だの、肝心のポイントがとれないだの、おせっかいが過ぎるだの、トレーニングをさぼるだの……口うるさいのは相変わらず。
怒っている内容が全て自分のせいなわけだから、反論できるわけはないが、そもそも相当嫌われているのであろうことはわかっていた。
冷たいもの言いも、冷たい視線もいつものこと。
ただ、最近はそれプラス挙動不審ともいえそうな行動が目につくようになった。
もっとも、本人も気をつけているのか、おそらく他に気づいている人間はいないだろう。
いつも若い相棒を気にしてみている虎徹には、その妙な部分がやけに目に付くようになったというだけ。


今もそうだ。
トレーニングをしているバーナビーの横で休憩と称してごろりと横になっていた虎徹は、顔にかけたタオルの隙間からちらりとバーナビーを伺っていた。
横になる虎徹の隣で、バーナビーは涼しい顔でマシントレーニングをこなしている。
それが、どのくらいしてか…
突然かっと顔を赤らめたかと思うと、一瞬にして元の表情に戻り手を止めた。
「?」
タオルの下から伺っていた虎徹がどうしたのかと思っていると、おもむろに立ち上がったバーナビーが虎徹を見もせずに、
「お先にあがります」
それだけ言って出て行ってしまった。
ぽかんとした虎徹が起き上がり後姿を見つめていると、向こう側でトレーニングをしていたネイサンがやってきて、
「まぁたハンサム怒らせたの?」
と、呆れていた。
自分が怒らせたわけではないだろうがと思いながらも、虎徹は何かしただろうかと思い返してみる。
だが、心当たりはまったくない。
いやまあ、細かく言えば今日も隣でだらりと休憩していたわけだし、怒らせる理由は自分かもしれないが…
気になった虎徹は、とりあえず後を追ってトレーニングルームを出て行った。
着替えているのかと更衣室へ行ったが、目的の人物の影は見えない。
虎徹はタオルを持つとそのままシャワーブースのほうへ行ってみる。
服を脱いで入っていくと、奥のほうから水音が聞こえた。
虎徹はバーナビーと思われる人物が使っているシャワーブースの隣を陣取ると、ひょいと隣を覗いた。
そこには予想したとおり、鍛えられたバーナビーの背中が見えた。
どうしようかと思った虎徹は、とりあえず声をかけてみることにする。
「なあ、バニーちゃんよ」
「っ!?」
言った途端、お化けでも見たかのような顔でバーナビーが振り向いた。
「…あ」
振り向いたバーナビーが声をかけてきたのが誰かを認めると、一瞬顔を赤く染めて向こうを向いてしまった。
「何してるんですかおじさんっ」
向こうを向いたままのバーナビーの声は、明らかに怒っているが迫力がない。
それどころか、虎徹はその一瞬で見てしまっていた。
一瞬こちらを向いたバーナビーの…
体の中心、雄の象徴が、明らかに臨戦態勢になっていた。
「あー……わりぃ」
虎徹は慌てて顔を引っ込めると、隣のシャワーの湯を出した。
だが、そのすぐ後、隣のブースでがさごそと音がしたかと思うと、虎徹の入ったブースの前を金髪が横切った。
「え」
虎徹はそれを見るや慌ててブースを飛び出すと、無意識にバーナビーの腕を掴んでいた。
どう考えても、今の時間で熱を開放してしまうことはできないはずだ。
「なんですかっ」
顔を赤くして、しかし忌々しそうに振り返ったバーナビーのそこを、虎徹は真っ先に確認すると掴んだ腕をぐいと引っ張る。
「おじさん、なんなんですかっ」
引っ張られて虎徹の使っていたシャワーブースへ入れられたバーナビーは、腕を引き剥がそうともがく。
「バニーちゃん、それじゃまずいだろうが」
呆れたように言う虎徹に、バーナビーは何を言っているんだという顔を見せた。
「俺にかまわずヌイてけって言ったってそりゃ遠慮すんのはわかるけどよ…」
だから、自分が出て行こうと言うようにかけておいたタオルを手にとり出て行こうとした虎徹の後ろに、苛苛とした声が投げつけられた。
「どうしろって言うんですかっ」
「…え?」
虎徹が振り向くと、赤い顔を苦しそうに歪めたバーナビーがいた。
「どうって…だから……」
見れば、隠していないバーナビーの中心はさっきよりもいっそう大きく育っている。
「自分でヌイちゃえば?って言ってんの、そんなんなってちゃもう収まらないだろ?」
「………」
当たり前のように言った虎徹に、バーナビーは苛々を募らせた険しい表情を見せる。だが、その中に何か、この優等生らしくないものが見え隠れした。
「……………まさかと思うけどバニーちゃん、マスターベーション知らないの?」
思わず虎徹が呟くと、バーナビーは困ったように眉を下げた。
「言っていることがわかりません」
「…うそだろ?」
目を丸くして虎徹が呟くが、目の前で泣きそうな困ったような顔で唇をかみ締めるバーナビーを見ていると、何だか無性に可愛らしい生き物に思えてくる。
虎徹は持っていたタオルを再びかけると、バーナビーのほうへ向き直った。
この生意気な優等生は、どうやらとんでもない天然記念物だったらしい。こんな状況なのになんだかこいつ酷く可愛らしいなと思ってしまった。
くだらないことだが、ここはひとつ、ひと肌脱いでやるべきか。
「あー……しゃーねぇ、教えてやるよ」


シャワーから出る湯の中で、バーナビーは少し低いところにある虎徹の肩に額をつけていた。
「はぁっ…おじさん、何か…おかしいです」
シャワーの音に混じって、かすかにくちゅくちゅと音がしていた。
虎徹の手に握られたバーナビーの雄は大きく育ち、今にも爆発しそうにダラダラと蜜をあふれさせている。
「おかしかねぇよ、気持ちいいだろ?」
「ふっ…んっ…」
身を震わせながら少し顔を傾けたバーナビーは、甘い吐息を漏らしながら目の前に見えた虎徹の唇に見入った。
「おじさん…」
甘く呟きながら、顔を起こして少しだけずらすと、それはもうすぐそこで。
「ん?どした?バニーちゃ……んっ」
気づけば、虎徹の唇はバーナビーのそれに捕らえられていた。柔らかな唇の感触に虎徹が驚いていると、ぬるりと熱い舌が入り込んでくる。
「んっ?んーっ」
虎徹が反応するより早く、バーナビーの舌が虎徹の口腔を這い回り粘膜を嘗め回していた。
巧みなわけではないのに、感じるところをなぞられて、虎徹の背がびくんと震える。
ちゅくちゅくと音を立てながらバーナビーの舌が虎徹の口腔を出入りすると、今度は虎徹の雄が反応しはじめた。
ちゅぷっと音がして唇が離れると、バーナビーは視線を落とし虎徹のそれをじっと見つめる。
「おじさんのも…同じコトをすれば気持ちいいですか?」
そういうと、返事も待たずに虎徹の雄を握り締めていた。
「おい、バニーちゃん?」
「ねぇ…おじさん、一緒に…」
見上げれば、虎徹の目の前にバーナビーの潤んだ瞳があった。
「ひとりでは、怖いです…」
恥ずかしそうな、どこか悔しそうな、情けない顔の。
虎徹は、一瞬考える。
だが、そもそも自分が始めたことだと腹をくくると、一つため息を吐いた。
「まあ、乗りかかった船、か」
そう言うと、虎徹は二人の距離を縮め、今度は自分のと一緒にバーナビーのそれを握った。
「んっ…」
頭の上から甘い吐息が聞こえると、虎徹がにやりと笑う。
「キモチ、いいだろ?」
「くっ…えぇ…」
バーナビーは呟くと、再び虎徹の顎を捕らえて口付けた。
今度は虎徹も積極的に舌を絡め、二人、互いの舌を舌で扱くように絡めあいながら、達していた。

「はぁ…バニーちゃん、スッキリしたか?」
吐き出された白濁した欲望をシャワーの湯で洗い流しながら、虎徹がバーナビーに問いかけると、同じくシャワーで体に跳ねていたそれを洗い流していたバーナビーが虎徹に身を寄せ、ちゅっと口付けた。
「今のが、マスターベーションというものですか?」
この期に及んでまだ口付けなどを落とすことに驚いていた虎徹が、言われた言葉に我にかえる。
「ああ…」
「教えてください」
「………なにを?」
虎徹がきょとんとすると、いつも冷静な顔のはずのバーナビーが恥ずかしそうに視線を落とした。
今日はまた、ずいぶんとレアな表情が見れると虎徹が思っていると、その視線がおずおずと虎徹にあわされる。
「こういうの、わからなくて…」
虎徹はそれで、ああと思う。
いろいろあってまともとはいえない少年時代だったのだろう。
こんなことを教えるのもどうかと思うが、男同士のこんな話もしたことはなかったのだろう。
男同士の猥談というよりは、子供に性教育をするようなものか。
「こんなおじさんでよけりゃな」
そう言って笑うと、バーナビーが嬉しそうににっこりと笑った。
「おいしいワインがあるんですよ、今日僕の家で飲みませんか?」
無邪気に笑うバーナビーに虎徹の表情も緩む。
「そりゃ嬉しいねぇ、いっちょ宅飲みでもするか」
やっぱり、今夜は性教育だなと内心思いながら虎徹はシャワーを終えて出て行った。
その後ろ姿を見つめながら、
「ええ…楽しみです」
そういって笑ったバーナビーの瞳は、獲物を捕らえた獣のように光っていたことを虎徹は知らなかった。


-END-

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