りりぃのお部屋

□ヤル気スイッチ
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人には誰しも「ヤル気スイッチというのがある」。
と、テレビで言ってたぞとおじさんが言っていた。
正直、僕にはぴんとこない話だった。やらなければならないことであればヤル気もなにも関係なくやるべきだし、やらなくてもいいことならしたいことが優先されて自然にやるし、したくなくてやらなくていいことなら、スイッチなんてあっても入らないだろう。
なんのことやら、おじさんの言うことだから、正直話し半分に聞いていた。


最近、おじさんにそのスイッチがあるらしいということを発見した。


そのおじさんのヤル気スイッチは………夜のベッドの中で入るものだった。

「んっ……ふっ……」
おじさんは、僕に抱かれることに同意してからも、恥ずかしいのかどこか納得がいっていないのか、ほとんど乱れてくれない。声は抑えるし顔も隠しがちだし、終わるまでまるで何かの訓練のように耐えている。
達しているから気持ちが悪いわけではないと思うし、求めれば応じてくれるから心底嫌がっているわけではない。
…と、思いたい。

それが、いつだったか。
いきなり腕のなかで蕩けたのだ。勿論物理的にということではない。なんというか、抱いているおじさんの体が、とろりとなった。説明するのは難しいがまさに、そんな感触。
いつもと違うと思った時には、おじさんは熱っぽい瞳で僕を見つめ、なんと初めておねだりをしてくれたのだ。
その後も、本当にたまにではあったがとろりと蕩ける瞬間があって、自分から腰を振ってくれたり、普段は抑えてしまうエッチな声をたっぷり聞かせてくれたりした。
最初は、単純に回数をこなしてきたからおじさんも慣れて、そういう態度に出ることが恥ずかしくなくなったからかと思っていた。だが、そうではないらしいとはすぐにわかった。
そうならない時は、とことんならないからだ。
では、一晩に何回もすればなってくれるのかと思ったが、それも違った。夜が開けるまでとは言わないが、しつこく何度もしてみても、ならないときはならなくて、気を失うように眠りにつくまで声を抑え耐えるように眉間に皺を寄せていた。
その時ばかりはさすがに怒られるかと思ったが、翌日目覚めたおじさんは、やりすぎで腰が砕けて立てないと不貞腐れただけで、かえって僕に何かあったのかと心配をしてくるぐらいだった。
それでさっぱりわからなくなった。
おじさんが蕩けるスイッチは何なのだろう。


「んっ…ばに、そこやめっ」
組み敷いたおじさんの体が、しなった。眉間には皺が寄せられて、「耐える」顔になっている。
「ここ? だめなんですか?」
おじさんの中に指を入れて、少しずつ慣らしながら反応する場所を探していく。最近ではわりとスムーズに前立腺の裏側を探し当てることができるようになっていて、今もそこを探り当て刺激していた。
ちなみに、ここを刺激すれば蕩けるのかと思ったが、これもそうならないことがある。
とはいえここはやはり乱れさせるには絶好のポイントだから、なんと言われようとそこは必ず刺激した。
ローションをたっぷり含ませて、くちゅくちゅと音を立てる後孔を丹念にほぐしながら、そこをくりくりと弄った。
「やっ、ばにぃ、だめっての…」
おじさんは、眉根を寄せたまま困ったように僕を見た。頬が上気していて、耐える表情もまたたまらない。
だが、制止を聞かずに再びそこをぐりっと弄った瞬間だった。
「あっ…」
見る間におじさんが蕩けた。
「はんっ」
全身がピンク色に染まり、喘ぐような吐息で胸が大きく上下した。
口は半開きのまま舌がちろりと見え隠れする。目元も赤く染まり、潤んだ瞳がぼんやりとこちらを見つめる。
「あんっ…ばに…」
甘い声で囁かれて、これはスイッチが入ったとわかるが、念のため確認するようにおじさんの中の一点をもう一度ぐりっと弄った。制止の声が発されるだろうか。
「やんっ、ばにちゃ…………もっとぉ」
おじさんの腰がうねり持ち上がり、僕の指を飲み込んだところがきゅうと締まる。
よしと、心の中で手を打つと、僕はおじさんの中を強く刺激しながら指を増やした。
動かすたびにぐちょぐちょと音が響き、おじさんが体をくねらせながら僕の方に手を差し出す。
これは、キスのおねだり。
まだまだ数少ないスイッチの入った状態の中でも、この「キスしてほしい」は必ずしてくれる。
僕は体をずらすと中を弄る指をそのままにおじさんに覆いかぶさり、抱きしめた。おじさんの両手が僕の体に巻きつくように回される。
しがみついてくるようで堪らなく可愛らしい。
「ばにちゃん…して?」
小さく可愛らしく首を傾げられ、我慢などするつもりもないが我慢できずにその唇にむしゃぶりついた。中を弄る指の動きに合わせるように、舌でおじさんの口腔を攻め立てる。
「んっふっ…んんっ」
おじさんの鼻から甘い吐息が漏れ、体に回された両手がきつくまきついてくる。おじさんの後ろに含ませた指三本で中を強く穿つと、おじさんの体が震え始めた。
「んはぁ…」
唇が離れ、二人の間に垂れた銀糸を見つめながら、おじさんが僕の体に自分のペニスをすりつけてきた。
「な…ばにぃ? も、欲しい」
甘えるようにすりつけてきて、心臓が破裂しそうになる。おじさんのスイッチが入ると、壮絶な色香がまき散らされて部屋中がピンクに染まる気がする。僕の体内の血管も沸き立って、グツグツと煮え立つんじゃないかと思わせた。
「なにをですか?おじさん」
そして、この時ばかりはこんな質問も許されるのだ。
内心、倒れそうなくらい興奮していたが、それを押し込んで平静を保って言うと、おじさんは拗ねたように上目づかいでこちらに甘い視線をよこした。
「バニーの、いじわる……」
口を尖らせ、恥ずかしそうに視線を逸らすが、その手は下肢に伸ばされて僕の股間をまさぐっていた。
「これ…くれねぇの?」
おじさんの手が、僕のペニスを掴むと、きゅっきゅっと緩く握り締めた。
「おじさん、これ…ほしぃ……バニーのおっきいの、ほしい」
「くっ」
本当は余裕を見せたい。スイッチの入ったおじさんを、たっぷり楽しみたい。なのに、どうしてもおじさんの発するピンクのオーラに飲み込まれてしまう。
僕はおじさんの腰を持ち上げると指を引き抜いたそこに狙いを定め、今にも爆発しそうになった自分のそれを一気に押し込んだ。
「ぁひぃぃっ、ぃぃいんっ」
甘い甘い喘ぎが響いたと思ったら、おじさんのペニスがぴくぴくと痙攣するように震えながら、ぴゅぴゅっと少し蜜を吐き出していた。
入れただけで、軽くいってしまったようだ。
「おじさん、キモチいいんですか?」
目を細めて問うと、うっすらと開かれたおじさんの琥珀の瞳が僕を捉えた。
「い…いい」
息も絶え絶えといったように呟くと、甘い息を吐いて腰を揺らした。
「じゃあ、もっとあげますね」
僕はおじさんの、鍛えているくせにほっそりして見える腰を掴み直すと、勢いよく突きあげた。
「あひっいぃっ、ばに、ばにぃっ」
背をしならせ、腰を震わせるおじさんに、容赦なく腰を打ちつけると、ぐちゅじゅぷと淫猥な音が響く。合間におじさんの喘ぎ声がまじって、こっちがおかしくなりそうだった。
「あっあっ、おくっ、ばに…おくぅ」
おじさんの腰が揺れる。突き上げると内壁が恥じらうように締まって抵抗を見せるくせに、引こうとすると逃すまいというように絡みついてくる。
途中でおじさんをもっとも乱れさせることのできるポイントを擦ると、中がきゅんっと絡みついてきて、僕のそれを奥深くまで飲み込もうとするかのように動いた。
「はんっはふっ、あ、ばに、おじさんまた…」
「いいですよ、何回でも…」
身体の振るえと、後ろのしまりから、もう限界が近いのだろうとわかる。おじさんの中を激しく動きながら、自分も一緒に達しようと集中した。
「ああっあっばにい、いいっ、いくぅっ」
おじさんが全身を震わせて大きくのけぞり、僕を飲み込んだそこもきゅうううっと締まってくる。
「あっ……おじさん、すごい…」
飲み込まれているそこだけではなくて、触れているおじさんの全てが気持ちよくて恍惚と目を閉じたとき、腹に熱い迸りを感じた。見れば、おじさんのペニスから白濁した濃い蜜がだらだらと溢れ出ていた。
その蜜が噴出されるリズムに呼応するように、僕を飲み込んでいるそこがきゅんきゅんと収縮した。
「あっ…」
その、熱い内壁に叩きつけるように僕も欲望を吐き出す。
「はぁっ…ばに……ばにぃの…きもちいい」
うっとりと呟くおじさんが可愛すぎて、いろっぽすぎて、僕の身体はこの夜、落ち着くことを忘れてしまっていた。








「ううううう…ばにちゃん、ちょっといい?」
翌日、会社で机に向かってデスクワークをしていると、おじさんがいきなり唸りだした。
夕べの情事が激しすぎて、正直、今日はおじさんは出勤は難しいのではないかと思っていた。スイッチが入ったおじさんのせいといいたかったが、それにのみこまれて無茶をしたのは結局自分で、出勤できないおじさんの言い訳をどうしようかと朝から思っていた。
なのに、おじさんは気力で出勤した。
すごいと思うのと同時に、きっと身体が辛いはずなのに無理をさせている自分に反省した。
そうして反省しながらの午前中、報告書あたりに詰まったのか、おじさんが唸りだして僕に助けを求めてきた。
当然助けるつもりで席を立ち、おじさんのところへ回り込もうとしたとき、何故かおじさんも席を立った。
「おじさん?」
どうしたのかと見ると、おじさんがちょっとと言って部屋を出た。険しい顔をしていたし、何かあったのかとその後を追うと、何も言わずにおじさんはトイレに入っていった。
このフロアのトイレを使うのは、普段は正直言って僕たちくらいのものだ。なので、連れションがてらというわけではないが、ちょっとしたナイショ話をすることもあったりする。
だから今もそれかと思った。
が、おじさんはトイレに入りキョロキョロしてほかに人がいないのを確認すると、いきなり僕を個室に押し込めた。
「おじさん?」
驚く僕を尻目に、おじさんは続いて同じ個室に入ると鍵を閉めた。そうして、訝しむ僕に………あの視線をよこした。


蕩けている。


「ばにぃ……」
甘い吐息、潤んだ瞳、蕩けた身体。
「お…じさん?」
「今朝…ちゃんと洗ったはずなのにな…」
おじさんは囁きながら僕のジャケットのジッパーをはずし、シャツの中に手を差し入れてくる。ほてった手のひらが、さわさわと這い回った。
「夕べのお前の、中から溢れてきちまって…」
おじさんが目元を染めて、恥ずかしそうに視線を下げた。
「なあ…バニー? その……足して、ほしいなぁなんて……」
そう言って、ちらりと僕を見上げた。きっと、僕の顔は真っ赤にそまっていたに違いない。おじさんは、にやっと笑うとズボンの上から反応しはじめた僕のペニスを握り締めた。
「もう、出ない?」
言われて、頭が沸騰した。
「出ますよ、おじさんそんなこと言って後悔しないでくださいね」
言うなり、僕はおじさんの身体を反転させて尻の割れ目に自分の猛ったペニスを擦り付けた。腰を動かし擦り付けながら、おじさんのズボンのベルトに手をかける。
「あ…ばにちゃん……熱い」
おじさんの甘い甘い声をききながら、興奮していく身体をおじさんにぴったりとくっつける。
おじさんの熱い身体を感じながら、それでも僕の頭は考えた。



何もしていない職場での朝。
入ってしまったおじさんのスイッチは、果たしてどこにあるのだろうか。

それを見つければ、それは楽しく充実するのかもしれないが、どこかわからずハラハラドキドキするのも、これから毎回探し出そうとがんばるのも、楽しいかもしれない。
僕はそう思うと、おじさんいわからないようにくすりと笑った。

-END-

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